偽造在留カードで不法滞在していたとして、在日外国人が摘発されるケースが後を絶たない。入手先の多くが会員制交流サイト(SNS)で知り合ったブローカーだ。とくに新型コロナウイルス禍が続くなか、SNSは貴重な情報源や交流の場。便利さの裏では、犯罪の入り口にもなっている。(江森梓)
1万円で作成
「偽造在留カードが作れるし、いい求人も載っているよ」
平成31年3月ごろ、ベトナム人のグエン・ティ・ナムさん(29)=仮名=は、知人のベトナム人技能実習生に、フェイスブック上のあるグループを紹介された。在日ベトナム人らが情報交換を行う「トウキョウバイト」。そこで偽造在留カードを作っているとの投稿を見つけた。
投稿主にメッセージを送るとすぐ返信が来た。指定された銀行口座に1万円を振り込み、自身の期限切れ在留カードと自分の顔写真を送ると、数日で偽造在留カードが届いた。
「違法だと分かっていたと、グエンさんは振り返る。30年7月に技能実習生として来日した。パワハラが横行していた実習先の環境が合わず、半年で失踪。再び就職先を探そうとしたときには在留期限が切れていた。「学びたいことはたくさんあるし、借金も返したかった」
偽造カードを使い、九州地方で太陽光パネルを設置する仕事を見つけた。だがカードを手にして約半年後、買い物に出かけた先で警察官に職務質問されたことがきっかけで不法滞在が発覚し、逮捕された。
不正手続きも
多国籍の人々が手軽に利用できるSNS。とくに新型コロナ感染拡大で帰国も困難になると、家族や友人との気軽な連絡ツールや、自国言語に翻訳された日本のニュースなどの情報源として需要が高まっている。
一方で便利な機能は犯罪の温床にもなる。警察庁によると、偽造在留カードの所持などの摘発件数は令和元年に748件あり、年々増加傾向にある。偽造カードの多くがSNSを通じて入手されたものだ。
昨年10月には、ベトナム人男性の在留カードを偽造したとして大阪、兵庫、埼玉の3府県警による合同捜査本部が、入管難民法違反の疑いで中国籍の女2人を追送検。捜査本部によると、ブローカーがSNSを通じて技能実習生らから注文を受け付け、中国にいる男に発注。男が2人に偽造を指示していた。
また同月に入管難民法違反容疑で大阪府警に逮捕されたベトナム人の男は、SNS上で知り合ったブローカーから他人の在留カードを入手し、食事宅配サービス「ウーバーイーツ」の配達員になる不正手続きの方法も伝授されたという。
抜本対策必要
「在日ベトナム人向けのSNSのサイトでは、犯罪に関わるような投稿が増えたように感じる」。在日ベトナム人らを支援するNPO法人「日越ともいき支援会」の吉水慈豊(よしみずじほう)代表は指摘する。コロナ禍で働き口が減るなど苦境にあるなか、違法と分かっていても悪い情報に頼らざるを得ない状況が犯罪グループにつけこまれやすくなっているのではないかという。
グエンさんは約2週間勾留されたのちに釈放され、東京都内にある同法人に身を寄せた。偽造在留カードを廃棄したいまは就職できない。飛行機の便数が減って航空券代が高騰し、帰国も難しい。
吉水さんは「在日外国人がSNS上の悪い情報にだまされないよう周知する一方、就職を支援するなど根本的な対策が必要だ」と話している。