新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言中に新聞記者らと賭けマージャンをしたとして、東京地検特捜部は18日、黒川弘務・元東京高検検事長(64)を賭博罪で略式起訴した。2020年7月に不起訴処分(起訴猶予)としていたが、検察審査会の「起訴相当」議決を受け、再捜査した結果、処分を一転させた。新聞記者ら3人は再び起訴猶予とした。
略式起訴は書面のみの審理で簡裁に罰金を求める手続き。東京簡裁が「略式不相当」と判断せずに略式命令を出し、黒川元検事長が罰金を納付すれば、裁判を開かずに手続きは終結する。
特捜部は当初の捜査で、賭博罪の成立を認めた上で、マージャンは仲間内のみで行われ、賭け金も多額ではなく、娯楽の延長線上だったとして、黒川元検事長を起訴猶予とした。しかし、検察審査会が20年12月、起訴相当と議決し、再捜査していた。
起訴状によると、黒川元検事長は20年4月~5月、産経新聞記者宅で計4回、記者ら3人と、1000点を100円に換算する「点ピン」で賭けマージャンをしたとされる。【志村一也、二村祐士朗、国本愛】
「市民感覚」重視で方針転換
黒川元検事長の定年延長に端を発した一連の問題は、元検事長本人が在職時の不祥事で刑事罰を科される異例の事態に発展した。検察は一度は黒川元検事長を不起訴としたものの、市民で構成される検察審査会からの厳しい指摘を受け、結論の見直しを迫られた。
「国民がどう思うかは重く考えている」。18日、急きょ記者会見を開いた東京地検の山元裕史次席検事は「反省の弁」を口にした。
一連の問題は20年1月、政府が黒川元検事長の定年延長を閣議決定して表面化した。翌月に定年を控えており、前例のない定年延長は、官邸に近いとされる黒川元検事長を検事総長に据える布石だとして批判が起きた。そうした中、当事者である黒川元検事長の賭けマージャンが発覚。黒川元検事長は辞職し、検察庁法改正案も廃案となった。
検察にとって賭けマージャンの事件処理は一連の混乱で最後に残った懸案だった。当初の捜査では、メンバーは限られ、レートも広く社会で行われているとされる1000点を100円に換算する「点ピン」だったとした上で、似た事例の立件例はほぼなく、公平性も重視して不起訴とした。
しかし、検察審査会は納得しなかった。検察側は、公務員であることを理由により重く処罰する規定がないことも不起訴理由に挙げたが、審査会は「的外れ」と批判。刑罰法規を熟知し、違法行為を止める立場にあった黒川元検事長による賭けマージャンは社会の信頼を裏切ったとした。
再び不起訴としても、審査会が納得しなければ強制起訴されて裁判が開かれることになる。検察側はこう分析したとみられる。「黒川氏は止められる立場にあった」との市民からの指摘を受け入れ、不起訴の見直しを余儀なくされた形だ。
告発した市民団体は18日、「(略式起訴にとどめたのは)悪質な茶番劇だ。検察は国民の声を受け止め、起訴し、適正な検察行政を取り戻すべきだ。常習賭博罪で刑事裁判が開始された場合には、弁護士資格を剥奪される厳しい結果になった」との声明を発表した。
弁護士法は、禁錮刑以上が確定すると、刑期を終えるまで弁護士資格は持てず、弁護士会の秩序や信用を害するおそれがある場合も弁護士登録の請求を拒絶できると定める。罰金刑であれば弁護士登録を求めることはできるが、日本弁護士連合会は、社会的影響も加味して登録の可否を審議するとしており、登録は容易とはいえない。