万博への台湾招請問答でネット沸騰…吉村知事の答弁と本音

2025年大阪・関西万博への台湾参加をめぐる吉村洋文大阪府知事の発言が波紋を広げている。5日の府議会本会議で、台湾が国として参加できるよう働きかけるか問われた際、「政府に委ねたい」と答弁したことにインターネット上などで賛否両論が噴出。「腰が引けている」との厳しい意見もあった。吉村氏は答弁後、産経新聞の取材に応じ、真意を明らかにした。(佐藤祐介)
府議の“仕掛け”
5日、府議会本会議場。質問に立った西野修平府議(自民)は「台湾が国として参加した前回の万博が1970年の大阪万博だったことは、何かのめぐり合わせではないか」と前置きして、吉村氏にこう尋ねた。
「万博は国の事業。知事に参加(招請)国を決める権限はないが、(運営主体の)日本国際博覧会協会の理事だ。台湾が国として参加できるよう働きかけてもらいたい。知事の考えは」
通常、議員は有意義な答弁を引き出すため、質問の趣旨を府側に事前通告し、担当部局が答弁内容を調整することが多い。しかし西野氏は、部局が作る答弁ではなく「吉村知事の純粋な気持ちを知りたい」との思いから「大阪・関西万博への参加国について」としか通告せず、部局からの問い合わせに応じなかった。
いわば「ぶっつけ本番」で吉村氏の政治的スタンスをただす質問だったわけだが、この“仕掛け”は不発に終わる。吉村氏は「どの国を招請するかは政府の権限と責任で判断する。その判断は政府に委ねたい」と明言を避けた。
西野氏はそこで、「知事自身が国として参加してほしいと願っているのか」と迫ったが、吉村氏は「参加国の招請は外交にも関わる。スタンドプレーのように胸の内を披露する場ではない」とかわした。
こうした答弁に対し、ツイッターでは「言ったら言ったでまた揚げ足を取られるだけ。知事の判断は正しいと思う」といった肯定的な内容のほか、万博は国の主催だとして「開催地とはいえ首長が軽々しく踏み込むことはあり得ない。国にはぜひとも決意を持ってほしい」と、政府に注文を付ける意見もあった。
賛否両論渦巻く
日本は1972年の日中国交正常化を機に台湾(中華民国)と断交した。日中共同声明で日本政府は「中華人民共和国が中国の唯一の合法政府」と承認している。今回の件では「現在の日台関係を考慮すれば国としての招請は難しい」(外務省)というのが公式見解だ。
意外というべきか、日台の交流を推進する民間団体「日本李登輝友の会」は、吉村氏の答弁について「妥当だ。国交がない以上、国家として招くのは難しい」と評価した。柚原(ゆはら)正敬事務局長は「万博は交流性が一番大事だ。政府が今後(招請について)どういう工夫をするかだと思う」と語った。
一方、ツイッターでは吉村氏に対し、次のような批判的な意見も散見された。
「こういうところは常に腰が引けてる(中略)いつもはスタンドプレーで胸の内を披露してばかりなのに」「吉村さん、盟友の台湾呼ぶの当たり前やろ! 誰に忖度(そんたく)して、政府判断に逃げてるんや?」
質問した西野氏は取材に「新型コロナウイルス対策を国に先駆けて発信してきた吉村氏は、こういうときこそ、スタンドプレーすべきだ」と主張した。
スタンスは「親台」
本人はどう考えているのか。答弁翌日の6日、産経新聞のインタビューに応じた吉村氏は「あの場は知事の立場で答弁しなくてはいけない。私に(招請先を決める)最後の責任があるなら、政治的な意思のもとで判断することはあり得る」と述べた。
その上で「政府と違う立場のことをやるべきだという意見に対し、最終責任者の万博担当相をおいて、スタンドプレーみたいなことを言うのは、非常に無責任だ。パフォーマンスの発言をしても意味はない」と強調した。
台湾への思いを尋ねると、「『親台』ですよ、もちろん。台湾のことは信頼している」と明言。「台湾はこれまでいろんな形で万博に参加しているから、大阪・関西万博にも当然参加してもらいたい」と締めくくった。
こうした本音を聞くと、議会答弁が「あまりにそっけない」と思ってしまうのは、記者だけだろうか。