◆パチンコバッシングから見え隠れする日本人の本質
昨年の新型コロナウィルスによる非常事態宣言で、嵐のようなバッシングを受けたパチンコ業界。バッシングや休業による倒産、廃業により、娯楽の王様と呼ばれたその勢いには陰りが見える。都内のホール関係者は当時のことをこう振り返る。
「店内にテレビを置いて流しているでしょう。でも、ワイドショーやニュースでパチンコ打ちに行く人たちが晒されたりして、自分らが悪者になったような気持ちになった。ウチの店は非常事態宣言の翌日から休業。最初は時短営業にしようかって話もあったけど、風当たりの強さを考えて休むことにしました。
でも、パチンコは当時、補償を受けられない業種だったんで、お金のことを考えるとどうしてもね。経営者や幹部が無給なるのはいいんですよ。社員やバイトの生活を考えたら、批判を覚悟で店を開けるべきだという意見も出ました」
税金を払い、商店街などの地域イベントにも積極的に参加していたのに、補償も出ない、店を開けるだけでバッシングされる状況に置かれたことで、自分たちがいるパチンコという業界の存在について社会からの疎外感を感じたという。
コロナによる一連の社会情勢の変化は、パチンコ業界に大きな影を落とした。いや、影を落としたことよりも、パチンコ業界が抱える諸問題を白日の下にさらすことになったのではなかろうか。
パチンコ業界が内包する問題とコロナ……。その先にはいったいどのような未来があるのか、パチンコの諸問題に鋭く切り込み話題となった『パチンコ滅亡論』の著者である大崎一万発氏とヒロシ・ヤング氏が、さらに鋭くパチンコに斬り込んだ最新刊『パチンコ崩壊論』から引用しながら、パチンコ業界の未来について探ってみたい。
◆補償はないが休業を迫られた
一連のバッシングについて、ヒロシ・ヤング氏はこのように振り返る。
「絶対見逃しちゃいけないのが、この時点(※昨年の緊急事態宣言前後、4月頃のこと)ではまだパチンコが5号セーフティネットの対象外だったっていう事実ね。何の保証もないのに休めないよっていう考え方は、今だと共通認識になってる感はあるけど、この時点ではとにかく休業! 自粛! が『正義』だったわけで」
5号セーフティーネットとは、業績が悪化している業種に属している中小企業を支援するための措置である。しかし、全ての業種ではなく、中小企業庁が指定業者として認定している業種に限られる。この時点ではパチンコ業界は5号セーフティーネットの指定業種ではなく、パチンコ店の多くは支援が受けられなかったのである。
前出のホール関係者が訴える「疎外感」とは、まさにこのことである。税金を払い、商店街などの清掃活動などにも率先して参加しているにもかかわらず、ピンチの時ははしごを外されたわけである。さらに当時の状況をヤング氏はこう続けた。
「そして16日、緊急事態宣言の全国拡大。こうなると業界内でも、休業しない店舗は「悪」だって意見が大勢となった。実際、最終的には全国98.7%のパチンコ屋が休業に踏み切ったわけ。これってさ、凄い数字だよね」
他業種でここまでの休業率を達成し、統計として記録が残っているものは果たしてあったのだろうか。しかし、こうした動きは誰からの評価もなく、バッシングの炎はさらに激しく燃え上がっていった。
◆ワイドショーによる報道が火に油を注ぐ
共著の大崎一万発氏はパチンコ業界のバッシングを招いた要因は、テレビのワイドショーにあったと指摘する。
「営業してるのは全体のわずか1.3%なのに、それがパチンコ屋の体質みたいに思われてもなぁ。で、ここまでの一連が、サンモニ(※TBSのサンデーモーニング)の報道から3週間も経ってないわけよ。マスコミの煽り、世間の鬱屈した不安、小池さんの名指し、この3つが要因となって、急激にバッシングが燃え上がったんだよね」
ヤング氏も報道のされ方について疑問を呈する。
「これまた面白おかしく報道されたよな。都内のパチンコ屋が休業になった時、意識低い系のパチンコ客が東京を脱出して、茨城や栃木の営業店舗にこぞって打ちに行った。駐車場には東京ナンバーの車がズラーっと……。金髪ネックレスの、いかにも輩っぽいルックスの客が『え、コロナ? 関係ねぇっスよ』みたいな映像が使われて。いかにもパチンコ打ちはこういう奴みたいな感じで、あれ絶対客を選んでコメント取ってるよな」
◆群集心理の怖さ
その後、迷惑系YouTuberなどの登場や、ワイドショーに出演するコメンテーターの誤った認識による発言などにより、緊急事態宣言下のパチンコ業界に吹き荒れたバッシングはますます過熱した。こうした状況をヤング氏は危機感を持って見つめていた。
「大げさだって言われるかもしんないけど、関連して思ったのは、関東大震災の際の朝鮮人虐殺のこと。朝鮮人が井戸に毒を入れたってデマが流れて、それを真に受けた一般市民によるリンチと虐殺があったんだけど、ついそのことを思い出してすごく怖くなった。こういう状況になったとき、群集心理で平気でこんなことできるのが日本人なんだなって」
大崎氏は「心理として、悪いことはコミュニティ外のせいにしたくなるっていうのはあるかもな」と指摘する。ヤング氏は大袈裟と語るが、果たしてそれは本当に杞憂で終わるのだろうか。
◆パチンコは日本社会を映す合わせ鏡
パチンコ業界はその後、5号セーフティーネットの指定業種となった。しかし、あの時、さしたる根拠もなく日本中でパチンコ業界をバッシングしたことは、日本社会が抱える闇の部分、いや、本質に関わってくるのではなかろうか。ヤング氏は日本社会におけるパチンコの存在についてこう語る。
「常々言ってるじゃない、パチンコは日本社会を映す合わせ鏡であると。そもそもパチンコ自体が成り立ってる根本こそが日本そのものなんだよ。ソープランドや自衛隊みたいに、フワっとしたところでなんとなくの合意で存在している。だからパチンコを研究すると、それは図らずも日本社会の研究になる、がオレの持論」
◆民度の低い客と民度の低いバッシング
大崎氏はさらに手厳しい。
「今のパチンコ屋って大半がちゃんと健全な商売やってるのよ。でも客の民度の低さを利用して商売してるのもこれまた事実」
さらにこうも付け加えた。
「ワイドショーやネットニュースに乗っかってパチンコを叩いていた連中も相当に民度は低いよ。差別意識と勝手な思い込みだけでやってるんだもん」
閉塞感の強い昨今の日本。コロナ禍におけるパチンコへのバッシングは、そうした日本の現状をありありと映し出したのではなかろうか。大崎氏、ヤング氏の共著である『パチンコ崩壊論』では、パチンコ業界が抱える釘調整、広告規制、ライター、依存症などの様々な問題に斬り込んでいる。迷走する娯楽の王様に未来はあるのだろうか。
<文/長谷川大祐>
【長谷川大祐】
SPA!本誌編集。料理やエンタメ、スポーツ分野まで幅広く取材し、自ら執筆することも。また、これまでにも多く書籍を手がけた