新聞記事きちんと理解せずに「怒り」 大川小遺族に「殺人予告」した元講師の思い込み

東日本大震災の津波で、児童ら計84人が犠牲となった大川小学校(宮城県石巻市)の遺族などに対して、脅迫文を送ったとして、高知県江南市の元講師の男性(40代)が、脅迫と威力業務妨害の罪に問われた事件。 東日本大震災から10年の節目となる今年3月11日、仙台地裁(江口和伸裁判官)は、懲役2年6カ月・執行猶予5年(保護観察付き)の有罪判決を言い渡した。 脅迫文を送ったきっかけは、ある新聞記事だったが、元講師がその内容をきちんと理解しているとは言えず、身勝手な動機によるもので、現代的な問題を孕んだ事件だった。(ライター・渋井哲也) ●大川小学校の遺族に「殺人予告」を送りつけた 判決によると、元講師は2019年9月から2020年6月にかけて、大川小学校の児童遺族に「殺人予告」などと書いた文書を報道機関経由で送りつけた。 また、香川県さぬき市教育委員会に「あんたら10人は◯ぬで。」という文書を送った。元講師は以前、同市立小学校の講師として勤務していた。 ほかにも、大阪教育大付属池田小(大阪府池田市)には「先生の悪口を講演会と称してしゃべるんじゃない」などとする遺族への脅迫文を送付した。 ●「亡くなった教師が責められている」と思い込んだ 2月25日の初公判では、元講師と母親の尋問があり、即日結審していた。 元講師と母親は2人暮らし。母親によると、元講師は正義感が強い人物という。特に小学校が絡んだ事件に興味があり、それまでも関係した機関に手紙やメールを送っていた。母親は、息子について悩んでいたが、距離感もつかめていなかったようだ。 母親の尋問につづいて、元講師本人の尋問がおこなわれた。 元講師は「大変申しわけない」「得体のしれない恐怖を与えてしまった」と謝罪を口にしつつ、犯行の動機について「怒りの感情が大きかった」と話した。大川小学校の遺族が、亡くなった教師を「責めている」と思ったという。 そう判断した材料は、大川小学校をめぐる国賠訴訟で、遺族が勝訴した新聞記事だった。その記事には「勝訴 子供たちの声が届いた!!」と記されていたが、「学校・先生を断罪!!」という横断幕を掲げた遺族の写真もあった。 この記事を見て、怒りの感情をコントロールできなくなったようなのだ。 ●遺族の主張を調べていなかった ちなみに、大川小学校の遺族は、亡くなった教師個人を訴えていない。被告として責任を問うた相手は、宮城県と石巻市だ。 仙台高裁は、事前防災体制に不備があったとして、県と市の責任を認めた。最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は、県と市の上告を退けて、遺族側の勝訴が確定した。裁判官5人が全員一致だった。
東日本大震災の津波で、児童ら計84人が犠牲となった大川小学校(宮城県石巻市)の遺族などに対して、脅迫文を送ったとして、高知県江南市の元講師の男性(40代)が、脅迫と威力業務妨害の罪に問われた事件。
東日本大震災から10年の節目となる今年3月11日、仙台地裁(江口和伸裁判官)は、懲役2年6カ月・執行猶予5年(保護観察付き)の有罪判決を言い渡した。
脅迫文を送ったきっかけは、ある新聞記事だったが、元講師がその内容をきちんと理解しているとは言えず、身勝手な動機によるもので、現代的な問題を孕んだ事件だった。(ライター・渋井哲也)
判決によると、元講師は2019年9月から2020年6月にかけて、大川小学校の児童遺族に「殺人予告」などと書いた文書を報道機関経由で送りつけた。
また、香川県さぬき市教育委員会に「あんたら10人は◯ぬで。」という文書を送った。元講師は以前、同市立小学校の講師として勤務していた。
ほかにも、大阪教育大付属池田小(大阪府池田市)には「先生の悪口を講演会と称してしゃべるんじゃない」などとする遺族への脅迫文を送付した。

2月25日の初公判では、元講師と母親の尋問があり、即日結審していた。
元講師と母親は2人暮らし。母親によると、元講師は正義感が強い人物という。特に小学校が絡んだ事件に興味があり、それまでも関係した機関に手紙やメールを送っていた。母親は、息子について悩んでいたが、距離感もつかめていなかったようだ。
母親の尋問につづいて、元講師本人の尋問がおこなわれた。
元講師は「大変申しわけない」「得体のしれない恐怖を与えてしまった」と謝罪を口にしつつ、犯行の動機について「怒りの感情が大きかった」と話した。大川小学校の遺族が、亡くなった教師を「責めている」と思ったという。
そう判断した材料は、大川小学校をめぐる国賠訴訟で、遺族が勝訴した新聞記事だった。その記事には「勝訴 子供たちの声が届いた!!」と記されていたが、「学校・先生を断罪!!」という横断幕を掲げた遺族の写真もあった。
この記事を見て、怒りの感情をコントロールできなくなったようなのだ。
ちなみに、大川小学校の遺族は、亡くなった教師個人を訴えていない。被告として責任を問うた相手は、宮城県と石巻市だ。
仙台高裁は、事前防災体制に不備があったとして、県と市の責任を認めた。最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は、県と市の上告を退けて、遺族側の勝訴が確定した。裁判官5人が全員一致だった。