「出勤簿には印鑑を押さないように」キリスト教団牧師がコロナ助成金を不正受給の疑い

信者約4000人のキリスト教団で、牧師らがコロナ助成金を不正受給していた疑いがあることが、「週刊文春」の取材で分かった。西日本を中心に教会を有するこの教団はコロナで特例が認められている雇用調整助成金(雇調金)を昨年5月に申請し、9月に933万円を受給。その後、監督機関の兵庫労働局から「本当に休業をしていたのか」などと指摘され、今年2月に全額を返金していた。
雇調金とは、雇用を維持した企業に、国が休業手当の一部を支援する制度。コロナでの特例が認められるのは、コロナの影響で事業が縮小し、1カ月間の売上が前年同月比5%以上減少し、休業を実施していることが条件となっている。
教団関係者が明かす。
「実は日曜礼拝や聖餐式などの休止中も、牧師さんたちは忙しく働いていました。通常業務に加え、対面できない信徒さんに電話やショートメッセージ、手紙できめ細かく連絡していた。また、オンラインで礼拝を配信する方もいらっしゃった。しかし、教団側は牧師さんたちに礼拝休止期間は『休業期間』なので、出勤簿に印鑑を押さないように指示していたのです」
小誌が入手した9月24日付の「雇用調整助成金の支給について」という文書にはこう記されている。
事実、収入が減っている以上…
〈「礼拝や集会を休止している間は『休業期間』となりますので、出勤簿には印鑑を押さないようにお願いします」と通達を出した上で、5月は公休日(祝日と月曜日)を除いて、すべて「休業日」として申請しています〉
また、「雇用調整助成金申請に関するご質問について」という文書では、〈出勤簿には該当日に出勤印を押してくださり、あとの日は「休」とお書きください。実際は普段同様に、あるいは普段以上に忙しくされていたと思いますが、事実、収入が減っている以上、それは「休業」にあたります〉。
つまり、勤務実態を把握しておきながら、“みなし休業”として助成金を受給していたのである。
労使問題に詳しい佐々木亮弁護士が指摘する。
「牧師の業務が日曜礼拝だけでなく、給与もその対価としてのみ支払われているわけではない以上、礼拝が行われていないことを理由に、牧師が休業したとみなして雇調金を申請・受給することは、不正受給に当たると言わざるをえません」
監督機関の労働局に事実関係を問い合わせると、次のように回答した。
「当局として現状、不正受給と認定している事案ではないため、個別の案件への回答は差し控えます。ただ一般論として、不正を疑わせる客観的証拠等が報道等で提示されれば、一度決定した処分を取り消して再調査する可能性はございます」
3月20日、教団の代表者に礼拝室で話を聞いた。
この教団とは、いったいどのような団体なのか
――5月中も働いていたのに休業扱いにしたのでは?
「牧師の働きは礼拝が中心。5月中は礼拝を全面的に休止していたので、休業と考えていた。当時はこれで解散になるんじゃないか、ほとんどのキリスト教徒がそういう危機感を持っていたと思います。そのあと、労働局の方からは礼拝以外も労働にあたると指摘され、労働の定義について認識も違いがあり、返金させてもらったんです」
――儀式以外の業務は勤務に該当しないのか?
「(オンライン礼拝などは)お休みの間に趣味で将来のために勉強で始めた先生がいた、くらいのことだったと私は思っています」
教団は後日、書面でこう回答した。
〈本件について第三者を含む検証委員会を立ち上げて、申請から返納に至る経緯に問題がなかったか、検討を行って参ります。反省すべき事は深く反省して今後の取り組みに生かし、こうしたことが再び起こらないように努めて参ります〉
この教団とは、いったいどのような団体なのか。3月24日(水)16時配信の「週刊文春 電子版」及び25日(木)発売の「週刊文春」では、不正受給していたこの教団の名前や実態、教団幹部が牧師たちの疑問の声に答えたQ&Aなどを詳報する。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年4月1日号)