河井元法相公判 議員の辞職は遅きに失する

今頃になって議員辞職を表明するのは、遅きに失したと言えよう。今後は説明責任を果たし、大規模な選挙買収事件の全容を自ら語るべきだ。
2019年の参院選を巡り、公職選挙法違反に問われた河井克行・元法相が、東京地裁の公判で、従来の無罪主張から一転し、大筋で起訴事実を認めた。事件の責任をとって、衆院議員を辞職する意向も表明した。
克行被告は、妻の案里氏を参院選広島選挙区で当選させるため、地元議員ら100人に計2900万円を配ったとして起訴された。渡した現金は統一地方選の当選祝いや陣中見舞いだったと主張し、買収の意図を否定してきた。
だが、これまでの公判に証人として出廷した地元議員らの大半は「買収の意図があると感じた」と証言している。外堀を埋められた克行被告は、否認を続けるのが難しいと判断したのだろう。
案里氏も自身の裁判で買収の意図を認定され、有罪判決が確定している。追い込まれた末の方針転換だと言わざるを得ない。
ただ、この時期の進退の決断には、不自然さが残る。克行被告が3月15日までに辞職していれば、4月に補欠選挙が行われる予定だった。自民党にとって厳しい戦いが予想される補選を回避する意図があったのではないか。
克行被告は「妻を当選させたい気持ちがあった」と述べた。事件の背景には、保守分裂となった激しい選挙戦があったとされる。
選挙前、案里氏側には自民党本部から1億5000万円の活動資金が提供された。公判では、陣営のスタッフ3人に提供された220万円には「党本部からの資金が含まれていた」とする元会計担当者の調書が読み上げられた。
買収資金は、どこから捻出されたのか。克行被告は、有権者が納得できる説明をすべきだ。
事件に対する自民党の対応は鈍い。二階幹事長は記者会見で「党としても他山の石としてしっかり対応していく」と述べた。克行被告が党在籍時の事件であり、人ごとのような発言は許されない。
菅首相は、党が提供した資金について「党勢拡大のために広報紙を配布する費用などに充てられた」と語り、買収には使われていないとの認識を示している。
1億5000万円もの使途として、この説明に納得できる人は少ないのではないか。自民党は資金の流れを改めて調査し、公表すべきだ。真相解明の努力を怠れば、政治不信は一層強まるだろう。