31億円「M資金」初公判 蔵人金男会長はこうして28億円を振り込んだ

31億円「M資金詐欺」初公判

牛角や大戸屋を傘下におく外食大手チェーン「株式会社コロワイド」(神奈川県横浜市)の蔵人金男会長が被害総額約31億円を騙し取られたとする詐欺事件の初公判が2021年3月25日、横浜地裁で開かれた。被告は武藤薫氏。XとYは武藤氏の協力者とされる。傍聴記の2回目。

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蔵人氏により振り込まれた1億3000万円は、すぐにXが4000万円、9000万円と2回にわたって引き出し、武藤氏に渡されたという。

その後、Xは東京丸の内の郵船ビルディング内の貸し会議室で蔵人金男氏に対し、2800億円の資金提供をうけるためには、さらに1億8000万円が必要だと説明した。

■GHQ総司令部のあった丸の内が舞台

郵船ビルディングとは東京駅と皇居を貫く、行幸通りの角という一等地に面する地上16階建てのビル。改築前のビルはGHQ(連合国軍総司令部)が接収し官舎としても利用された。GHQ総司令官であるマッカーサーの部屋も並びに建っている第一生命ビルの中にあった。丸の内一体は、GHQや米国が接収した歴史があり、旧戦勝国が所有するという基幹産業育成資金の話を盛り上げるにはもってこいの舞台回しなのである。ちなみにいわゆる「M資金」のMはマッカーサーのMではなく、マッカートニー少将のMとされる説が有力である。

GHQの気配がいたるところに残る丸の内を訪れた蔵人氏は当時、何を思っていたのか。

いずれによせ蔵人氏はXの説明を信じ、1億8000万円ものカネをアジア経済協力会議所に振り込んだ。それはYのジャパンドリーム社に渡り、Xが引き出し、武藤に渡ったと検察は説明している。

初公判の30分に及ぶ検察側の冒頭陳述の間、法廷に座る武藤被告は、なにを嘘を言っているのかというようにしばしば首を左右に振っていた。その仕草が印象的だったと傍聴していた複数の記者が話す。

1億8000万円を蔵人氏から引き出した以後、武藤側のM資金の詐欺話はディティールが細かなくなっていく。細かくするのは金を引き出し続けるためとも言えよう。次にXは蔵人氏に、基幹産業育成資金の2800億円を輸送する費用として980万円かかると説明する。

無論そんなカネは輸送されてはない。

しかし平成30年6月1日、蔵人氏は980万円を振り込み入金。そのカネは3日後に引き出された。

さらに、Xは郵船ビルディングに蔵人氏を呼び、2800億円のための倉庫の保管料が必要だと説明する。それでも蔵人氏は言われるがままに350万円を入金する。

■ついに振り込まれた28億円

そして7月。さらにXは蔵人氏に2800億円の資金提供を受けるためには1%を支払う必要があることを説明した。1%と言えば28億円である。

蔵人氏はこのカネを払わなければ、これまで支払ってきたカネが無駄になると考え、振り込む決断をした。検察は蔵人氏のこのように内心を説明した。

そして蔵人氏3億3000万円のカネを惜しんだために、28億円ものカネを振り込むことになる。

9月18日、28億円は振り込まれ、それのカネは即日、武藤被告の口座に渡った。武藤被告は、これを即日引き出した。まんまと28億円を手にした武藤は何を思ったのか。今後法廷で肉声を聞く機会もあるのだろう。

以上が蔵人氏が武藤側に支払ったカネの一部始終である。合計で31億円以上。2013年と2014年の振り込みを合わせれば36億円に及ぶ。

当然ながら2800億円の資金提供は実行されず、さらに倉庫保管料を支払うようにメールが来た。ここでようやく蔵人氏は警察に被害届けをすることになった。(つづく)

(取材・文=平井康嗣/日刊ゲンダイ)