軍事バランス上の中国優位に現実味 米は相当の危機感、立て直し急ぐ 河野克俊前統合幕僚長が激白「日本は決して他人ごとじゃない」

自衛隊の元制服組トップ、河野克俊(かわの・かつとし)前統合幕僚長(66)が夕刊フジのインタビューに応じた。中国共産党政権は軍事的覇権拡大を進め、台湾や沖縄県・尖閣諸島への野心をあらわにしている。日本はいかに領土領海を守り、アジアの平和と安全を維持すべきなのか。菅義偉首相と、ジョー・バイデン米大統領による首脳会談への期待も含めて、聞いた。
「軍事バランス上、中国がこの地域で優位に立つことが現実味を帯びてきている。米国は相当の危機感を持ち、軍事力の立て直しを急いでいる。日本は決して他人ごとではない」
河野氏はこう語った。安倍晋三前首相の厚い信頼を得て、2014年秋から統合幕僚長を歴代最長の4年半務めた。
尖閣周辺の緊張が高まったのは、民主党政権による12年の国有化以降だ。習近平氏は翌13年に国家主席に就任し、「台湾統一」を掲げている。
「(尖閣国有化後)中国は一気に攻勢を仕掛け、防衛交流のチャンネルも打ち切った。海上自衛隊は現在、海上保安庁の後方から常に中国海軍をマークしているが、不測の事態もあり得る」「中国が台湾侵攻した場合、日本の南西諸島が戦域に入る可能性もある」
中国海軍の空母「遼寧」などの艦隊は5日、台湾周辺海域で訓練を行った。中国軍機は頻繁に台湾の防空識別圏(ADIZ)に進入している。
これに対し、自由主義陣営は、日本と米国、オーストラリア、インドによる戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」に加え、英国やEU(欧州連合)などが、中国の暴走を阻止する構えを見せている。
16日の日米首脳会談では、中国を見据えて、「日米同盟の強化」や「台湾海峡の安定」などを明記する共同文書の発表が準備されている。
河野氏は「米国の対中戦略上、最大のパートナーは日本だ。だからこそ、バイデン氏は最初の対面会談の相手に菅首相を選んだ」といい、続けた。
「中国が共産党独裁体制を続ける限り、(自由主義陣営との)『価値観をめぐる戦い』は終わらない。日本は何より『自分の国は自国で守る』という意識を強く持ち、対処すべきだ」「菅首相には、対中戦略のすり合わせを、バイデン大統領と綿密かつ十分にやってきていただきたい」