佐賀県嬉野(うれしの)市にある養護老人ホームで入所者の胃ろう用カテーテルを抜いたとして傷害罪に問われ、無罪が確定した30代女性が、犯人と決めつけられ精神的苦痛を受けて体調を崩したとして、施設側に損害賠償を求めた訴訟の判決が23日、佐賀地裁であった。達野ゆき裁判長(三井教匡裁判長代読)は、施設への慰謝料請求は認めず、未払い賃金の約55万円の支払いを施設側に命じた。
達野裁判長は、施設側がビデオ映像などから女性に疑いがあると認識したことは「不合理ではない」と指摘。施設側が自宅待機命令や市に通報、警察に相談したことも「過失があったとはいえない」とした。
一方、施設側が休職中に立て替えた社会保険料については女性の未払いを認定し、全額の約127万円を支払うよう女性に命じた。
判決などによると、2014年11~12月ごろ、施設内で入所者のカテーテルが抜ける事故が14回発生。女性が傷害罪で起訴されたが、佐賀地裁は17年12月に「故意に抜いたとするには合理的な疑いが残る」と無罪を言い渡し、確定した。また、女性の体調不良は業務が原因として、既に労災認定もされている。【高橋広之】