乗客「コロナ怖かった」 JR鹿児島線、停電でダイヤ大混乱

23日午後0時40分ごろ、JR鹿児島線の海老津(福岡県岡垣町)―東郷(同県宗像市)間の上り線で停電が発生し、走行していた特急ソニック23号(7両編成)と区間快速(6両編成)が立ち往生した。JR九州が周辺を調べたところ、海老津―教育大前(宗像市)の2カ所で架線が切れているのを発見した。鹿児島線は一部で運行を見合わせ、上りの折尾(北九州市八幡西区)―福間(福岡県福津市)間は約8時間40分にわたって不通となった。午後9時23分ごろから運行が再開されたが、約5万人に影響が出た。
この停電で特急と普通の計105本が運休し、計98本に遅れが出た。JR九州によると、架線の切断のうち1カ所は城山トンネルの出入り口付近で見つかったという。また、停車したソニックの4両目の右側窓ガラスが1枚割れているのを確認。窓は二重ガラスで、外側のみが割れたため車内への破片飛散はなかった。JR九州は停電との関連を調べている。
停車したソニックと区間快速の乗客計約250人は最長約3時間にわたって車内から出られなくなったが、JR側の誘導で線路伝いに歩いてバスなどに乗り換えた。停電で空調機器が使えなくなったが、けが人や不調を訴える人はいなかったという。
停車した区間快速に乗っていた福岡市東区の男性会社員(38)によると、車内は窓や扉も開かず、温度も上昇したため、上着を脱いで蒸し暑さをしのぐ乗客が目立ったという。男性は「密閉された空間で、新型コロナウイルスの感染も怖かった。原因や見通しなどについてアナウンスがほとんどなく、もっと情報がほしかった」と話した。
JR鹿児島線で発生した停電による運転見合わせは、会社員や学生らの帰宅時間を直撃。博多駅(福岡市博多区)や小倉駅(北九州市小倉北区)は帰宅手段を失った人たちで大混乱となった。
小倉駅から羽犬塚(はいぬづか)駅(福岡県筑後市)まで帰ろうとしていた専門学校生の男性(19)は「運転再開があまり遅くなるようだったらどうすればいいのか……。新幹線を使うほどお金を持っていないので困っています。こんなことは初めてです」と立ち尽くした。
大分市の男性会社員(20)は福岡市内で新入社員研修を受けて博多駅から帰ろうとしたところ、乗車予定のソニックが運休に。「バスで帰ることにしたが、何時間かかるのか」。北九州市小倉北区の男性(79)は人出が多い連休を避けて福岡市の親族に会った帰りだったが、乗っていた電車が途中で止まったという。車内で3時間待たされた後に博多駅に戻ったが、「車内では停電が起きたというアナウンスが繰り返されるばかり。くたくたです」と疲れた表情で語った。【中里顕、成松秋穂、吉川雄策、浅野翔太郎、平川昌範】