入院患者への虐待事件があった神戸市西区の精神科病院「神出病院」で、職員の半数近くが虐待を認識し、全病棟での違法な隔離が10年以上前から常態化していた疑いが市のアンケートで判明した。
同病院では2020年3月、元看護師ら6人による重度の精神疾患がある入院患者への虐待が発覚。トイレで水をかける暴行や患者同士で無理やりキスをさせるなどの行為が繰り返され、準強制わいせつや暴行などの罪で起訴された6人全員の有罪判決が確定している。
アンケートは同12月、この6人を除く医師や看護師ら全職員218人を対象とし、匿名で市に直送する方式で行い、122人から回答があった。22日、学識経験者らでつくる市民福祉調査委員会で報告された。
56人が虐待を「見聞した」と回答。このうち5人は「2012年以前からあった」とした。身体的な虐待をした職員はいなかったが、12人が患者をあだ名で呼ぶなど、「不適切な言葉遣いをした」とした。
同病院では患者4人を一室に集め、ドアを粘着テープで固定する違法な隔離が行われていたことも、市の調査で判明。アンケートでは、6割超の77人が同様の違法隔離を「行ったことがある」「見聞きした」と回答。当時の院長と医師が「知っていた」「知っていたはずだ」と答えた人は約70人にのぼった。10年以上前から勤務していた職員が「当時からやっていた」と証言していることなどから、市は違法隔離が10年以上前から、全病棟で常態化していたとみている。
市は20年8月に精神保健福祉法に基づく改善命令を出し、第三者委員会の設置を要求。病院側は同12月に危機管理委員会を設置し、外部の精神科医らを委員としたが、内部組織の位置づけだった。このため、21年2月から市職員がオブザーバーとして危機管理委に加わった。
22日の調査委員会では、精神医療の専門家や弁護士から「病院側が本気で改善する意思があるとは思えない」「内部組織による検証では真相究明につながらない」などの声が上がった。市は「市の権限で第三者委の設置を命じることはできない。改善が進まなければ、再び改善命令を出す」と説明した。【山本真也】