重い症状に長年苦しむB型肝炎患者の救済につながる判断となった。慢性B型肝炎を再発した患者の損害賠償の請求権が争点となった訴訟で、再発患者側の訴えを認めた26日の最高裁判決。請求権を否定され、二重の苦しみを抱えてきた原告は「判決が出るまでは恐怖だった。本当にうれしい」と涙ぐんだ。弁護団は早期の和解に向けて国に対応を求めた。
午後3時、判決が言い渡されると、最高裁正門前で原告の代理人弁護士らが「逆転勝訴」「除斥の壁を破る」と書かれた旗を広げ、支援者から拍手が起こった。その後、原告の平野裕之さん(62)=福岡市=は東京都内で記者会見し、これまでの苦しみを語った。
福岡市の公務員だった平野さんは、幼少期の集団予防接種が原因で29歳の1987年に発症。一度は治まったが、49歳の2007年に再発した。立っているのも苦しい状況が続いて休職と復職を繰り返し、同僚から「役立たず」などとなじられることもあった。56歳で早期退職を選択せざるを得なかった。
08年に福岡地裁に提訴。既に最初の発症時から除斥期間の20年が経過していた。訴訟で和解すれば1250万円の給付金を支払う救済制度を国が設けたのは12年。制度に基づけば給付金は300万円に減額される。「苦しみが減額されるのはおかしい」。法廷で訴え続けた。
1審は除斥期間の起算点を再発時として1250万円の支払いを国に命じたが、2審で覆された。最高裁の結論が出るまで、貯金を取り崩しながら、抗ウイルス薬の服用を続けた。平野さんは「再発で苦しむ他の患者にも同様の司法判断が続いてほしい」と願う。
集団予防接種での注射器の使い回しでB型肝炎に感染した人は全国で40万人以上いるとされる。今回の判決で、平野さんと同様の経過をたどった約110人の再発患者は救済される見込みだが、弁護団によると、違う発症パターンで除斥期間を争っている患者は200人ほど残るという。
三浦守裁判長は判決の補足意見で、除斥期間を争う患者は極めて長期の感染被害に苦しんでいることを踏まえ、「迅速な解決を図るため、国が被害者救済の責務を果たすことを期待する」と言及した。弁護団代表の小宮和彦弁護士は「他の患者の早期解決に向けて活動していきたい」との考えを示した。【近松仁太郎】