東京電力柏崎刈羽原発を巡り、新たな不祥事が発覚した。2015年8月、協力企業の作業員が同じ企業で働く父親のIDカードを誤って使用し、立ち入りが制限される「周辺防護区域」に入っていた。同原発では20年9月にも所員が他人のIDカードで中央制御室に入室した問題が発生したが、それ以前から、東電の核物質防護措置が危うい状態だった可能性が浮上した。【内藤陽、北村秀徳】
今回のID誤使用は一部報道で発覚。公表しなかった理由について、東電広報は「当時の核物質防護措置の運用に従った」と説明する。ただ、こうした東電の姿勢を含め、相次ぐ不祥事について、自民党県連の小野峯生幹事長は10日、「かける言葉もない」と厳しく批判。「我々としても他にも(不祥事が)あるんじゃないかと疑ってしまう。会社そのものの体質が問われている」と話した。
柏崎市の桜井雅浩市長は取材に「ID不正使用や核物質防護設備機能の一部喪失の問題の方が衝撃的だったが、(今回のID誤使用も)あってはならないこと。東電は組織のあり方を見直している最中であることを認識し、厳しく検証を進めてほしい」と話した。
東電によると、ID誤使用は、核物質を貯蔵する6、7号機原子炉建屋がある「防護区域」のゲートで、作業員が本人確認を受けた際に異常を知らせる警報が鳴り、覚知された。東電が県警に通報したため、防護区域への侵入は防いだという。ただし、作業員は「防護区域」の手前にある「周辺防護区域」のゲートは通過していた。
そもそも今回の誤使用は、作業員がIDを取り違えたことで起こった。作業員は出勤時、事務所の保管箱から自身のIDを取り出したが、原発敷地外に資機材を取りに行くため、IDをいったん保管箱に戻した。その後、外に出る必要がなくなり再びIDを持ち出す際、父親のIDと取り違えた。IDはまとめて保管されていた。
「周辺防護区域」のゲートにいた警備員は、IDの顔写真に違和感を覚え確認を求めたが、作業員はよく確認せず通過。警備員が通過を許したのは、朝の混雑時で他の作業員に迷惑がかからないようにとの配慮もあった。加えて、IDには確認がしやすいよう大きな文字で姓を記したシールが貼られていたが作業員と父親は同姓で、顔写真も親子のため人相が似ていたという。
新たな不祥事が発覚し、東電は「ID不正使用や核物質防護設備の一部機能喪失と併せて、今後、根本的な原因分析と改善措置活動に対する検討を進めていく」と話している。
同原発を巡っては、20年9月、東電社員が同僚のIDで中央制御室に不正に入室する問題が発生。さらに20年3月以降、侵入者を検知する機器が複数故障し、うち10カ所の代替設備が30日を超えて機能していなかったことなど、核物質防護措置の不備が相次いで判明している。一連の不祥事を受け、原子力規制委員会は21年4月、原子炉等規制法に基づく改善命令を出し、核燃料の移動を禁止した。