父親「死亡場所」5日前に契約 ALS事件起訴の医師 殺害疑い

筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者への嘱託殺人罪で起訴された医師らが自分の父親を殺害したとされる事件で、父の死亡場所として役所に届け出があった東京都内のアパートが、死亡の5日前に息子で医師の山本直樹容疑者(43)の名義で契約されていたことが13日、捜査関係者への取材で分かった。約1カ月の短期で、府警は殺害や遺体置き場として部屋を借りた疑いもあるとみている。
逮捕されたのは山本容疑者と母の淳子容疑者(76)、医師の大久保愉(よしかず)容疑者(43)の3人。2011年3月5日、共謀して山本容疑者の父・靖さん=当時(77)=を東京都内で殺害した疑いがある。
捜査関係者によると、靖さんは少なくとも10年ごろから長野県内の病院に入院していたが、山本容疑者らが都内に転院する意向を示し、11年3月5日午前に退院。山本容疑者が借りたアパートに連れ出したとみられる。靖さんの死亡届は同日午後、都内の区役所に淳子容疑者の名前で出された。死亡場所はこのアパートと書かれていたという。
アパートの部屋は死亡前日の3月4日から4月初旬の入居期間で、山本容疑者の名義で契約された。靖さんの死亡診断書には心臓などの異常で死亡したと記され、遺体は検視や司法解剖の対象にならず、火葬されたという。
死亡診断書には山本、大久保両容疑者の知人である医師の名前が記されていたが、この医師は府警の調べに「知らない」と関与を否定した。医師の所属先とされた診療所は実在していなかった。府警は山本容疑者らが虚偽の診断書を作成した疑いもあるとみている。
また、捜査関係者の説明では淳子容疑者が府警の任意の事情聴取を受けた際、「殺害計画を知っていた」という趣旨の話をしていたという。府警は今年3月、長野県軽井沢町の淳子容疑者宅を捜索。靖さんの殺害計画に関する複数のメールが見つかった。その際の任意聴取に「(メールの内容を)認識していた」と話したという。
山本、大久保両容疑者は京都市中京区のALS患者の女性に対する嘱託殺人罪などで起訴されている。