一般への接種が始まった高齢者向け新型コロナウイルスワクチン接種について、首相官邸ホームページ(HP)で公表されている富山県内の総接種回数は1471回(9日現在)で47都道府県中、最下位となったことが波紋を呼んでいる。接種の実務を担う市町村では少ない人員を接種業務に充てた結果「データ入力まで手が回っていない」といい、県は「実態とはかけ離れている」と強調。一部を医療従事者への接種に回す県のワクチン戦略も関係しているようだ。
県内には既に医療従事者分約8万人分と高齢者向け約7万2000人分のワクチンが到着。一般の高齢者向けの接種は5月から県内でも本格化している。
官邸HPで9日現在の都道府県別の高齢者への接種回数を見ると、1位の東京都は2万869回。北陸3県でも石川県が1万414回、福井県も5434回で、富山県は格段に少ない。
公表されている高齢者への接種回数は、実施した市町村や医療機関が国のワクチン接種記録システムへ入力したデータが基になっている。県によると、国からはシステムへ「定期的に」入力するよう求められているが、毎日入力する義務はなく、一定期間の分をまとめて入力しても問題ないという。
とはいえ、そんな事情を知らない一般の県民は「入力数=接種数」と解釈しがちだ。県民への“安心材料”を提供するため、県は市町村に対して入力を適宜進めるよう「お願い」する文書を送り、電話連絡を続けている。
逆に市町村は県に対して「マンパワーが足りず、接種に全力を注いでいて、入力まで手が回っていない」といった声を寄せているという。県は官邸HPの接種回数について「実態を全く反映していない。あくまでも記録」と理解を求める。
新田八朗知事は12日の会見で、接種回数最下位の理由を問われると「医療従事者に少しでも多く接種をしていただきたく、高齢者用のワクチンを市町村にご理解いただいた上で医療従事者用に転用させていただいている実態もある」と説明。実際、官邸HPで公開される県内の医療従事者向けワクチン接種回数は4万2755回(7日現在)。都道府県別で38位だ。
その上で新田知事は来週にもワクチン供給が増える見通しを明らかにし、「十分な量のワクチンでリカバーしていける」と力を込めた。【砂押健太】