1万年以上続いた縄文文化の価値が認められた――。三内丸山遺跡(青森市)などからなる「北海道・北東北の縄文遺跡群」(北海道、青森、岩手、秋田県)が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録される見通しになった。26日に諮問機関「国際記念物遺跡会議」(イコモス)から届いた朗報に、地元は喜びに包まれた。
最多の8遺跡がある青森県の三村申吾知事は26日午後7時から県庁で取材に応じ、コロナ禍に触れながらこう語った。「縄文時代を思うと、簡単に生きられる時代じゃなかったが、自然と共生する中で、とても平和な時代で生きるということが充実していた時代。さまざまな苦難を乗り越えて生きてきたということがあるから、アフターコロナの時代においては縄文のあり方、生き方が価値を持つと思う」
教科書にも登場するなど知名度が高い三内丸山遺跡は現在、シンボルである復元した大型掘立柱(ほったてばしら)建物が長寿命化工事のため6月下旬ごろまで見学ができないが、ボランティアガイド「三内丸山応援隊」代表の一町田工さん(83)は「縄文の遺跡を世界に発信できるのはうれしい。コロナの情勢ではあるが、ぜひ多くの人に遺跡を巡ってもらい、当時の生活や自然と共生した時代への理解を深めてほしい」と話した。
目の部分が遮光器を連想させる遮光器土偶が出土した亀ケ岡石器時代遺跡があるつがる市で、縄文に関するイベントなどを開いてきたNPO「つがる縄文の会」代表の川嶋大史さん(61)は「世界の『宝物』と認められ、地域の人間の一人として誇らしい」と喜んだ。
北海道には、大船遺跡、垣ノ島遺跡(函館市)やキウス周堤墓群(千歳市)など6遺跡がある。特に函館市内は道内唯一の国宝「中空土偶」を展示する市縄文文化交流センターなど関連施設も多い。函館商工会議所の久保俊幸会頭は「SDGs(持続可能な開発目標)が注目される今、生命の尊厳と向き合った縄文人の精神を学び、遺跡を活用したまちづくりを推進していきたい」と語った。20年以上にわたり発掘調査などに携わってきた大船遺跡のガイド、二本柳敏子さん(70)は「悲願がかなってうれしい。遺跡を次世代に伝える弾みになれば」と喜んだ。
大湯(おおゆ)環状列石(鹿角市)などがある秋田県の佐竹敬久知事は「大変喜ばしいこと。引き続き4道県や関係自治体が一体となって勧告通り決定されるよう取り組む」と歓迎のコメントを発表した。大湯環状列石は、縄文後期前半の大規模な遺跡で、万座と野中堂の二つの環状列石を主体とする。それぞれ直径40メートル以上あり、200年以上にわたり造り続けられたとされる。
御所野(ごしょの)遺跡がある岩手県一戸町では、御所野縄文博物館に集まった町関係者が喜びを分かち合った。県内では東日本大震災直後の11年6月に平泉が世界遺産登録されてから10年の節目に吉報が届いた。同遺跡は縄文時代中期後半の集落跡で、焼かれた動物の骨などが見つかっており、火を使った祭祀(さいし)が行われていたとされる。田中辰也町長は「認めてもらったことをうれしく思う。我々の生活には縄文の文化が脈々と流れている。本登録に向けて今後も活動していきたい」と話した。【南迫弘理、江沢雄志、真貝恒平、田村彦志、安藤いく子】