【奇妙?単純? 韓流の方程式】#32
昨年、コロナ禍で迷走する安倍政権(当時)を見て韓国人が口にした。「日本人は我慢強い」と。「アベノマスク」に「星野源とのコラボ動画」「給付金30万円の撤回」という“コロナ3点セット”は日本国民を大きく失望させたが、韓国人にとっても衝撃的だったようだ。特にマスクに関しては「マスクではなく眼帯ではないか」という呆れた声も聞かれた。あまりにバカげた内容に、韓国在住の日本人はエープリルフールのフェイクニュースと信じて疑わなかったそうだ。「韓国なら間違いなく大規模な反政府デモに発展したはず」と多くの韓国人が口を揃え、日本人の我慢強さに関心を寄せていた。朴槿恵前大統領を民意によってその座から引きずり降ろした国民には理解できないのだろう。
コロナ禍の混乱が始まって1年。日本の状況はさらに悪化している。海外からの水際対策は完全に失敗し、変異ウイルスが流入。日本国内の人流を抑制する一方で、海外からの入国者に対する水際対策はザル以下だったと言っていい。この1年の国民の努力が水の泡となった。その上、ワクチン接種の遅れは発展途上国レベル。何一つ満足な対応ができていない。感染拡大は人災といえるだろう。
■韓国はコロナ禍でも反政府デモ
これが韓国だったら国民は政府を許さない。実際、コロナ禍であっても韓国では、さまざまな大規模デモが行われていた。不動産価格の高騰や経済悪化への不満から昨年8月15日の光復節(独立記念日)には5万人規模の反政府デモが行われ、文在寅政権を糾弾している。さらに政府の医師増員計画に反発した医師らがデモや無期限ストライキを敢行。政府がこうした医師たちに現場復帰命令を出す事態となった。
韓国の世論調査では東京五輪についても「中止すべき」という回答が78%に上っている。「緊急事態宣言下でも東京五輪は開催する」と発言した国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ副会長も、米ワシントン・ポスト紙から“ぼったくり男爵”と名付けられたバッハ会長も、相手が日本で幸いだった。韓国なら入国時に生卵や唐辛子の粉を投げつけられたかもしれない。
経済の回復が遅れる日本では政府が疲弊した国民に目を向けることなく、五輪の強行開催に向けて準備を進めている。かつて民心を失った朴槿恵前大統領は支持率が前代未聞の4%にまで落ち込んだ。それに比べると菅政権の支持率はまだ30%台。この数字は日本人の我慢強さのたまものといえるのではないか。
(児玉愛子/韓国コラムニスト)