新型コロナウイルスの感染拡大が続く福岡県で、医療従事者へのワクチン接種が遅れている。企業でも接種が可能となるなど全国的に動きが加速する中、2回の接種を終えたのは5月28日時点で対象者の52・6%。九州・山口・沖縄で接種率は最も低く、全国平均の60・9%を約8ポイント下回る。県の委託業者による日程調整が遅れの要因となっていたため、医療機関が直接調整する方式に切り替えたが、現場の負担は増え、通常診療に支障も出ている。
福岡市内のあるクリニックは5月中旬、周辺で働く医療従事者240人分の接種を同月中に終えるよう市医師会から急きょ依頼され、日時の調整まで任された。
「(接種対象者から)この時間はだめとか、対応が遅いとかクレームが多く、看護師がどなられながら調整にあたっている」と男性院長(58)は明かす。高齢者への接種も重なり、通常診療の時間を短縮せざるを得なくなった。「もう少し早く分かっていれば、余裕を持って対応できたのだが」と不満を口にした。
医療従事者用のワクチン接種は、医師や看護師、保健師、救急隊員らが対象。県内分のワクチンは2月上旬以降、国から段階的に届けられた。超低温冷凍庫のある医療機関56か所で保管し、接種を行う医療機関618か所に配分される。
当初、接種対象者との日程調整を県から委託されたのが、福岡市の広告代理店だった。運営するコールセンターが対象者の勤務先に連絡し、調整業務にあたった。1瓶(5~6回分)を使い切れる人数をそろえた上で、接種を行う医療機関に届ける計画だった。
しかし、接種対象者も「打ち手」も多忙で、勤務先も多いため、国からのワクチン配布が本格化した4月中旬以降は調整が難航。スタッフを10人から100人に増やしたものの、大きな改善は見られなかった。
このため県は5月10日、接種を行う医療機関が地域ごとに対象者の勤務先に連絡し、調整する方式に変更した。広告代理店の担当者は「可能な限り対応したが、4月の途中からは想定していた業務量を上回った」と振り返る。県は委託費を減額する方向で検討している。
県内で対象となる医療従事者約21万人のうち、2回の接種を終えたのは5月28日時点で約11万人。全国では対象者約477万人のうち約291万人が完了している。福岡県と同様に緊急事態宣言が続く東京都の接種率は52・4%、大阪府は43・4%となっている。
福岡県内では5月中に1回目の接種がほぼ終了した。ワクチンは2回接種しないと十分な免疫がつかないため、1回しか接種を受けていない医師らからは、高齢者に接種を行うことへの不安の声も上がっている。県は6月中に2回目も完了したい考えだ。
県内では県が医療従事者、市町村が高齢者を対象に接種に取り組んでいる。県の担当者は今回の民間事業者への委託について「結果的に業務が滞ってしまい、県として事前準備が不足していたと言われても仕方がない」と話している。