【池田小事件20年】悲劇二度と…元死刑囚と接した弁護人と面会者の苦悩

児童8人が犠牲となった平成13年6月の大阪教育大付属池田小(大阪府池田市)の児童殺傷事件から8日で20年。宅間守元死刑囚=16年9月執行、当時(40)=の元主任弁護人は謝罪の言葉を引き出そうと試み、面会を重ねた公認心理師は罪の意識と向き合わせようとしたが、ゆがんだ思考の持ち主は一筋縄ではいかなかった。悲劇を繰り返さないために、社会ができることは何か。自問自答を繰り返した2人が、それぞれの立場から提言する。
ゆがんだ思考
「戦う弁護士なんていらんねん。早く楽になりたいだけ。死刑にしてくれ」。元死刑囚の主任弁護人を務めた戸谷(とだに)茂樹弁護士(大阪弁護士会)は初めての接見でこう告げられた。「ゆがんでしまっているな」という印象を持ったという。
極悪人を弁護する必要はない-。そんな手紙や電話が毎日のように事務所に届いた。目指したのは「謝罪を引き出す」「事件の真相を明らかにする」という異例の弁護活動だった。
「不条理な世の中に復讐(ふくしゅう)したかった」と話す元死刑囚に対し、戸谷氏は「なぜ復讐の対象が子供だったのか」と繰り返し尋ねた。だが、元死刑囚は最後までそれに答えず、謝罪の言葉も口にしなかった。そして16年9月、死刑が執行された。戸谷氏は「事件と向き合わせることができなかった」といまも悔やむ。
弁護を通じ「刑事罰や治療では根本的な解決につながらない人間もいる」と感じた戸谷氏。だからこそ悲劇を繰り返さないため、人格形成が重要だと語る。
「生まれながらの犯罪者はいない。理想論だが、ゆがんだ人間を生まない教育や家庭環境をいかにして築くか、だ」
措置入院の限界
15年8月の死刑判決以降、元死刑囚と面会を続けた公認心理師、長谷川博一氏は初めて面会した際、「どうせお前も自分のことを嫌うんだろ」と投げやりな言葉をぶつけられたことを覚えている。拘置所に何度も足を運んだのは「罪の意識を自覚してほしい」との思いから。「内容に納得はできないが、何を言いたいのかを理解しようとした」。死刑執行前まで面会を続けたが、元死刑囚が罪の重さを理解したとまでは思えなかった。
元死刑囚が繰り返し語ったのは事件の2年あまり前の措置入院のことだった。当時は重大事件を起こした精神障害者が不起訴や無罪などになった場合に、精神保健福祉法に基づき都道府県などが強制入院させる措置入院が行われていた。元死刑囚は判決で精神疾患ではなく人格障害と認定されたが、長谷川氏は「このときに適切な治療がなされていれば、事件に至っていなかった可能性もある」と考える。
28年7月、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺傷される事件が起きた。事件で死刑が確定した植松聖(さとし)死刑囚も犯行前に措置入院していた。長谷川氏は池田小事件の教訓も念頭に、「措置入院から出てきた後のことが考えられていない。措置入院のプロセスにいる医師や行政、司法などの担当者が横断的に退院後の対応を考えるべきだ」と指摘している。(小松大騎、小川恵理子)