旭川医大学長が辞任表明 選考会議、聴取前日に 不適切発言問題

自身の問題発言に揺れた旭川医科大(北海道旭川市)の吉田晃敏学長(69)が17日、代理人を通じ「これ以上の混乱を招くことは本意ではない」として突如辞任を表明した。解任の適否を審査していた学長選考会議を「ずさんな手続きで6月末の解任決議ありき」と批判し、同会議で18日に控えていた自身の聴取を目前に幕引きを図った形だ。【土屋信明、土谷純一】
代理人の中村元弥弁護士(旭川弁護士会)は旭川市役所で開いた記者会見で、文部科学相宛ての辞任届を15日付で提出したと明らかにした。文科省は取材に「辞任届は届いたが、正式に受理していない」としている。
中村弁護士は「学長選考会議における解任請求審議についてのコメント」と題する文書を報道各社に配布。辞任に至った五つの理由を説明した。
それによると、吉田学長側は(1)選考会議が解任の結論ありきで強引に進められている(2)具体的な解任請求理由が示されてない(3)同会議が設置し、弁護士で構成する調査委員会が学長からヒアリングしていない――と解任審査の問題点を指摘。
さらに、(4)調査委の報告書が学長に開示されていない(5)辞任の意思がない同会議委員を一旦やめたことにして議事を進めるなど迷走している――と主張し「(18日の)同会議で弁明することは正直意味がない」とした。
吉田学長を巡っては昨年11月、新型コロナウイルスの軽症患者の受け入れを求めた古川博之院長(当時)に「受け入れるならやめてください」などと発言し、問題化した。だが、中村弁護士は「仮に不適切な発言があったとしても、解任理由には当たらない」と吉田氏の考えを代弁した。
「説明責任、果たすべきだ」
旭川医科大の吉田晃敏学長と対立し、解任された古川博之・前病院長(66)が17日、毎日新聞の取材に「辞任は一歩前進だが、吉田さんは自分がしたことの説明責任を果たすべきだ」と訴えた。
新型コロナウイルス患者受け入れを巡り、古川氏は今年1月、学長の発言を外部に漏らしたなどとして病院長を解任された。吉田氏は学内会議でクラスター(感染者集団)が出た旭川市内の病院を批判するような発言をしたとされる。これに対し、古川氏を擁護する教授ら有志が2月、署名を集め、吉田学長の解任を学長選考会議に求めていた。
古川氏は17日夕、スマートフォンのニュースで吉田氏の辞任を知った。「署名を集めてくれた職員らの支援が大きな力になり、辞任に追い込めた」と語った。
一方で、「吉田さんは自身の疑惑について大学側に弁明する予定だった。何が問題だったかうやむやになってしまわないか」と懸念を示し「学長解任請求があっても意に介さず、自分が何も悪いことはしていないような顔をしていたのは憤りを感じる。(大学の)ガバナンスが壊された」と批判した。
今後の大学について「大学の正常化には月日がかかるだろう。再建のためにしっかり検証するべきだ」と話した。ただ、古川氏の大学復帰を求める支援者がいる中、自らは「今は学外なので見守るしかない」と話した。【岸川弘明】
旭川医科大を巡る主な出来事
2020年
11月 6日 旭川市の吉田病院で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)発生が判明。
8日 旭川市内の基幹病院での協議で、旭川医大病院の古川博之院長が吉田病院の患者1人の受け入れを受諾。その後、旭川医科大の吉田晃敏学長が態勢が整っていないなどの理由で受け入れを拒否。
13日 患者3人の受け入れを改めて求める古川院長の要請を吉田学長が拒否。従わない場合、院長を辞任するよう促す。
17日 吉田学長が大学運営会議で「コロナを完全になくすためには、あの病院(吉田病院)が完全になくなるしかない」などと発言。
12月16日 文春オンラインが11月17日の大学運営会議の音声データを報じる。
17日 吉田学長が発言は不適正だったと認めながらも「切り取られ方が意図と懸け離れたものと言わざるを得ない」と反論。
25日 文部科学省が古川院長に対する吉田学長の発言はパワーハラスメントにあたる可能性があるとして事実確認。
2021年
1月15日 役員会が古川院長に説明を求め、古川院長に自主的に辞任するよう決議。
25日 大学が古川院長を解任。
2月 8日 吉田学長が滝川市立病院と医療情報アドバイザー契約を結び月40万円の報酬を得ていたことが判明。
24日 教授らの有志団体「旭川医科大学の正常化を求める会」が吉田学長の解任を求める署名と要請書を学長選考会議に提出。
3月 4日 学長選考会議が吉田学長解任の適否について審査を開始。
6月14日 吉田学長が大学事務局に指示し、勤務実態のない学長特別補佐に数百万円の報酬を支払わせていたことが判明。
17日 吉田学長の代理人が辞任届提出を表明。