世界が評価しても財政危機の京都に物申す大阪

慢性的な収支不足により、このままいけば7年後には企業の「破産」にあたる財政再生団体に陥ってしまう京都市。6月に市は、公共料金や福祉サービス、職員給与にもメスを入れる財政改革案を示した。そんな京都市長に苦言を呈したのが、かつて財政危機に直面した大阪市の松井一郎市長だ。大阪市では市長の給与を40%カット、退職金はゼロとしており、「まずは市長自ら身を切る覚悟を示すべきだ」。京都市長の対応が注目されている。
「京都市長としてコメントする考えはない」
6月10日、記者団の取材に応じていた京都市の門川大作市長は、表情を一変させて憮然(ぶぜん)とした様子で答えた。普段はにこやかな門川市長がめったに見せない険しい顔。8日のある発言がきっかけだった。
「最初にやらないといけないのは、市長が自らの身分についてどこまでメスを入れるかだ」。同日、大阪市役所で記者団の取材に応じた松井氏は、京都市が示した改革案に対し苦言を呈した。
年間約5千万人の観光客が訪れ、国内外の調査では毎年高い評価を集める京都市だが、長年にわたり財政の台所事情は非常に厳しい状態が続いてきた。
大きな要因は、バブル期の市営地下鉄東西線の建設といった大規模公共工事の借金返済があるにもかかわらず、昭和時代から続く福祉や医療、子育て支援などの独自施策に予算を投入し続けてきたことにある。
市では財源不足を補うため、将来の借金返済に向けて積み立てている公債償還基金を取り崩して補(ほてん)する「禁じ手」を繰り返してきた。その結果、令和3年度末の基金の残高が本来あるべき2203億円より約4割少ない1380億円まで減少。対策を講じなければ毎年500億円以上の財源不足が続き、6年度には基金が枯渇、10年度に財政再生団体に転落する恐れが出ている。
大阪市長は退職手当ゼロ
のっぴきならない状態まで追い込まれた市は6月7日、7年度までの行財政改革計画案を発表。5年間で職員を550人以上削減し、職員の給与カットを3年間続けることで50億円を捻出するとした。すでに今年度から職員の本給最大6%のカットを始めている。
この改革案に疑問を投げかけた松井氏は、順番として職員より先に市長の給与や退職手当を削減をすべきだと主張する。松井氏の念頭にあるのは、日本維新の会創設者の橋下徹氏が大阪市長時代に自らの給与などを削減し、行財政改革を果たしてきたことだ。
大阪市によると、橋下氏は市長の在任期間(平成23年12月~27年12月)の給与や退職手当を見直し、本来の支給額計1億4270万円から計7480万円(給与4280万円、退職手当3200万円)を削減した。
松井氏は「橋下氏は給料3割と退職手当の5割カットをやった。そのレベルに門川市長もいかないと、市民サービスや職員給料のカットは理解されない」と強調。松井氏自身も市長として、給与は40%削減しており令和3年度の総額は1694万円となる見込み。退職手当は、橋下氏が平成27年に廃止したため、ゼロだ。
京都市長は退職手当3400万円超
一方、「不退転の覚悟で臨む」と改革に強い決意を示す門川市長も身を切ってこなかったわけではない。京都市によると、門川市長は平成20年の就任時から給与は15%削減し、21年1月からは20%減とした。
昨年12月に財政改革の大枠を発表した際は、記者団から自らの給与削減について問われると「当然のことだと思っている」と発言。今年4月に削減率を30%に引き上げた。
これによる削減見込み額は年間約770万円で、令和3年度の給与の総額は1796万円となる見込み。4年間の任期が終了するごとに支払われる退職手当は、1期目の4069万円から16%削減し、3期目(昨年2月に任期満了)は3402万円とした。現在は4期目だ。
日本大大学院の岩井奉信(ともあき)講師(政治学)は「新型コロナウイルス禍で市民も生活が厳しくなっている。まずはトップが率先して身を削る姿勢を示さなければ、市民から理解は得られない。パフォーマンスは必要ないが、市長は人件費を含めて改革の中身を市民に丁寧に説明していくべきだ」と指摘している。(秋山紀浩)