熱海土石流 どうか無事でいて… 避難先で眠れぬ夜明かし

「こんな大きな災害、いまだに信じられない」――。静岡県熱海市伊豆山で3日発生した土石流被害。近隣住民は小学校など市内の避難先で一夜を明かした。住み慣れた街の突然の変貌ぶりに、一様に不安な表情を隠せなかった。【梁川淑広、太田圭介、深野麟之介】
市総合福祉センターに避難してきた七尾団地の料理人、檜山佳孝さん(54)は「団地は斜面の一番高い所にある。団地は無事だが、土砂で道がふさがれて帰れない。被災現場近くの知人も多い。何とか避難していればよいが」と表情を曇らせた。妻も自宅に1人残されていて「連絡は取れるが、断水と停電が続いている」と案じた。
市立熱海中学校の体育館に避難したパート、安藤優子さん(54)はリゾートホテル「ラビスタ伊豆山」近くに住む。「ハザードマップを見たことがあり、土石流の警戒区域に位置するのは知っていた」と話す。しかし、「15年前に住み始めてから災害の発生がなく、「これほど大規模な土石流は全く予想していなかった」と驚きを隠さない。
土石流発生時、優子さんは市中心部に外出中。長男で熱海中1年の彬希さん(12)も所属する野球チームの練習で神奈川県湯河原町にいて、ともに無事だった。彬希さんは「1日も早く普段の暮らしが戻り、野球ができるようになれば」と不安そうな表情を見せた。
長女が運転する乗用車で、土石流に追われながら海辺の国道まで坂道を下ったという高齢女性は「これだけ生きていてこんな恐ろしい思いをするとは思わなかった」。こう、避難先の熱海中学校で振り返った。
3日午前10時半ごろ、消防と警察のサイレンが鳴り響くので窓を開けると、近所の人たちが山を指さし「土砂崩れだ」。数分後、重機で何かを削るような音に気づくと、さっきまであった数十メートル上方のアパートが倒壊していた。このため、長女が自宅から徒歩2、3分の駐車場に走り、車のエンジンをかけると、飛び乗ったという。
「アクセル全開で下った」とバックミラーに転がってくる石を見た長女。放心状態でJR熱海駅まで行くと、観光客が普通に歩いており「信じられない思いだった」と話した。