東京電力福島第1原発事故の避難指示が2015年9月に解除された福島県楢葉町の木戸川で4日、アユ釣りが11年ぶりに解禁された。原発事故で避難指示が出された地域で、川での釣りや漁が解禁されるのは初めて。
多くの天然アユが遡上(そじょう)する木戸川は原発事故前、県内外の釣り人でにぎわっていた。木戸川漁協では13年からアユの放射性物質の測定を開始。当初は国の基準値を超える放射性セシウムの検出もあったが、数年前からはごくわずかな検出や検出限界値未満が続いていた。昨年からは約2万匹の稚アユ放流を再開。県が今年5月から計20回実施した検査でも安全性が確認され、解禁が決まった。
この日は雨の中、早朝から多くの人々が訪れた。原発事故で富岡町から茨城県に避難した会社員の吉田正弘さん(43)は「地元での解禁はうれしい。木戸川は水がきれいでアユがおいしいので、唐揚げにしたい。夏の楽しみが戻ってきた」と笑顔で話し、次々とアユを釣り上げていた。
漁協ふ化場長の鈴木謙太郎さん(39)は「解禁は浜通りの内水面漁業の活性化に向けた大きな一歩。アユ以外や他の川でも解禁していけたら」と語った。【寺町六花】
浪江では調査続く
避難指示が出ていた他の地域では、今も川での釣りや漁が禁止されている。同じ双葉郡の浪江町では放射性物質の調査のためのアユ釣りが毎年実施されているが、解禁のめどは立っていない。
町内の川では震災前、初夏のアユ釣りが盛んだった。室原川・高瀬川漁協は18年から調査用のアユの捕獲数を増やすため、町民にも協力を呼びかけアユ釣りを実施している。2日に参加した同町権現堂、青田宗夫さん(83)は早朝から釣りを楽しみ、「川さ入ると時間がわかんなくなるな」と笑った。10歳から釣りを始め、自分たちで釣ったアユを塩焼きや唐揚げで食べるのが毎年のことだった。
町を流れる室原川と高瀬川の上流は一部が帰還困難区域になっている。同漁協によると、基準値を超える放射性セシウムが昨年の調査でも検出されており、解禁のめどは立っていないという。担当者は「安全な漁の再開に向け、町の皆さんと調査を積み重ねたい」と話している。【尾崎修二】