土石流が発生した静岡県熱海市伊豆山(いずさん)地区では、7日も自衛隊や警察などが約1700人態勢で捜索や復旧に向けた活動を続けたが、大量の土砂やがれきに阻まれ作業は難航している。復旧の長期化が懸念される中、被災者は片付けや入浴もままならず、不自由な生活が続いている。
クリーニング店を営む岡本政夫さん(69)は、7日朝から泥の撤去に汗を流した。一部の地域で断水が続く中、地元消防団と協力し、利用可能な消火栓に長さ25メートルのホース2本を連結して地区内を歩き回り、道路の泥を水で洗い流した。
自宅兼店舗の1階部分には土砂が流れ込み、クリーニングの機械も使えなくなった。被災後、復旧作業に来た道路関係者らと2日間かけて泥をかき出したものの、地区の道路は泥に埋まったまま。「この地区は高齢者が多く、私でもまだ若い。避難中の人も多く、自分が頑張らねば」と地区の掃除に乗り出した。店の営業再開の見通しは立たないが、「地元で営業再開を待っているお客さんが私の支え。今日は道路の泥をきれいにするので精いっぱいだったが、地域のために続けていきたい」と話した。
災害発生時は仕事で外出していたというパート従業員の村山正典さん(72)は、自宅が立ち入り規制エリアにあり、災害発生以来、一度も戻れていない。勤務先の熱海市内の温泉施設「マリンスパあたみ」で寝泊まりしながら仕事を続けている。何とか生活はできているが、ふとした瞬間、いつ帰れるんだろう、この先どうなるんだろう、という不安に襲われる。「これまで災害をどこか人ごとだと思って見ていた。まさか自分が当事者になるなんて思わなかった」と漏らした。
マリンスパあたみは7日から被災者向けに温泉の無料提供を始め、久しぶりの風呂を楽しむ被災者もいた。この日午後5時ごろ、電車と徒歩で約1時間半かけて訪れた女性(74)は「(土石流発生の)3日からお風呂に入れていなかったのでスッキリした。癒やされた」と笑顔を見せた。自宅の電気やガスは復旧したものの、断水が続く。施設に行って風呂にはつかりたいが、自宅から遠いため「毎日訪れるのは難しい。早く全部復旧して洗濯がしたい」とこぼした。
そば屋を営む小林和海(ともみ)さん(48)の店では7日午後4時ごろ、災害発生以来初めて蛇口から水が出た。ただ、泥は店のドアを破って地下2階まで流れ込んでおり、手作業で土砂を取り除いているが、地下1階の床すら見えていない。そば打ち台も被害を受け、片付けがいつ終わるかも見通せない。「水道が出てよかったが、泥が乾くと取り除くのがさらに大変。これからどうなるのか」と不安そうに話した。【渡辺薫、金子昇太、五十嵐朋子】