スマホ書き込み1日30回…気軽な「いいね!」が義務・依存へ

「つながっているのに孤独を感じる。疲れた」。エッセイストの

忍足
(おしだり)みかんさん(27)がスマホをやめた理由だ。
初めて手にしたのは大学1年の夏。すぐにインスタグラムなどのSNSにのめり込んだ。「今日の服は……」「これ食べた!」と逐一つぶやく。遊園地で遊んだ日は30回以上も書き込んだ。「すてきな生活を楽しむ自分主演の独り舞台。フォロワーが増えるのがうれしかった」
一方、友人も頻繁に投稿する。こまめにチェックし、すぐ返信しないと仲間から取り残されるとの恐怖感も。やがて「いいね!」を押し合うのが義務のように。楽しくなくなったがやめられなかった。
大学を卒業する頃には首に激痛を感じるなど体調に異変が表れた。医師らからは「スマホの長時間使用が原因」と言われた。さらに「歩きスマホ」中に交通事故に巻き込まれそうに。スマホ依存を自覚し危機感を持って、スマホをやめガラケーに替えた。しかし、「スマホに戻ったら、きっとまた依存してしまう」と打ち明ける。
ITジャーナリストで成蹊大客員教授の高橋暁子さんは「スマホ依存はSNSがきっかけになるケースも多い」と強調する。他人との比較や仲間外れになりたくないなどといった理由で使い続ける例も目立つという。総務省の2013年の調査では、ネット依存傾向の高い人の80.7%が、SNS利用時に悩んだり、負担に感じたりしていた。全体の56.9%よりも23.8ポイントも高い。
つらいのに、やめるのが難しいのには理由がある。東京女子大教授(情報社会心理学)の橋元良明さんは、「いいね!」に依存を誘引するしかけがあると指摘する。

「オペラント条件付け」という概念がある。レバーを押すと餌が出てくる装置にネズミを入れる。この仕組みに気付いたネズミは、餌を求めて自発的にレバーを押すようになる。毎回餌が出るのではなく、出たり出なかったりする方が、ネズミはよりレバーを押す回数が増えるという。
橋元さんは「どんなに投稿しても必ず返信があるわけではない。だから気になり何度もスマホを見てしまう。そして、『いいね!』をもらうと文字通り承認欲求が満たされ、絆を結べたと

安堵
(あんど)し、また投稿する。スマホ依存は、きずな依存」と解説する。
使用場所を問わないため、電車の中でも会議や家事をしている最中でも、遠く離れた人と連絡をとることができるようになった。スマホの普及は、人との付き合い方、コミュニケーションのあり方を大きく変えた。
筑波大教授(社会学)の土井隆義さんは「いつでもつながることができるから、つながっていないと強い孤立感を感じてしまう。スマホは私たちに快適さと利便性とともに『常時接続』と『疎外恐怖』をもたらした。スマホ依存の根っこにあるのは、どうしようもない不安だ」と話す。

コミュニケーションにスマホを使ったSNSが欠かせなくなった。
ITジャーナリストの高橋暁子さんによると、SNSの先駆けは2004年に始まったミクシィだ。パソコンや携帯電話を使って、何げない日記などを公開することが流行した。
スマホの広がりとともに、様々な機能をもつSNSが登場した。140字以内の「つぶやき」を書き込むツイッター、投稿への共感を示す意思表示ボタン「いいね!」があるフェイスブック、写真を投稿するインスタグラムなど。いつでも簡単にすぐ投稿できるようになった。短時間の動画を投稿できるTikTokも人気を集める。
LINEのように複数の人と同時にやりとりができたり、相手がメッセージを読んだかどうかを確認できたりするものも。メッセージを読んでも返信しない「既読スルー」、受信したらすぐに返信する「即レス」という言葉も一般化した。