勤務先の口座から約4億6000万円を着服したなどとして業務上横領罪などに問われ、名古屋地裁で12日に懲役6年(求刑・懲役8年)の判決を受けた名古屋市昭和区、無職の被告の女(59)。思いを寄せる男性の気を引くために積み重ねた着服金は、大きく膨らみ、実刑判決という重い結果を招いた。(野崎達也、木村優里)
判決によると、同市瑞穂区の解体工事会社「K&T」(法人税法違反などで公判中)の経理担当だった被告は2014~18年、同社の口座から自身や知人男性名義の口座などへ計約4億6000万円を振り込み横領。また、17年4月期までの2年間、架空経費を計上して同社の所得を隠し、法人税などを脱税した。
■ウソがきっかけ
「小さなウソから始まりました。みえを張ることなく、身の丈に合った振る舞いをしていれば、事件は起こらなかった」
6月17日、最終陳述で被告は涙ぐみ、悔恨をにじませた。
被告は、以前の勤務先で東京都内の酒類販売会社代表を務める男性と知り合った。ワイン業界では名が通り、被告にとって「神様のような存在」。K&Tで働き始めた13年頃から連絡を取り合うように。「華やかな世界に近づける」と感じ、2人で会うようになった。
きっかけは「複数の土地や建物を持っている」という被告のウソだった。男性は「明日までに3000万円貸してほしい」などと依頼してくるようになった。気を引くため、求め通りK&Tの金を何度も貸した。明細書に修正テープを貼って証拠隠滅もした。そのうち返済が滞るようになり、未返済額は「気づいたら、億を超えていた」。
■重い刑事責任
辛島明裁判官は、判決で「好意を寄せられているのをよいことに、言葉巧みに貸し付けを頼み込んだことも大きかった」と男性の責任にも触れ、「被告のみを責めるのは、いささか酷」と述べた。だが、被害額が大きく、発覚を免れようと不正な経理処理をしたことなどから、「刑事責任は相当重い」と実刑を選択した。
前を見据え、じっと判決を聞いた被告。横領発覚後に離婚した夫は証人として出廷し、内縁関係を続けて今後も被告を支える意思を示している。
一方、男性の会社側はK&Tに2億円余りを返還したが、地裁で損害賠償請求訴訟が係争中で、被害金が全額回収されるめどは立っていない。男性の会社は読売新聞の取材に対し、「担当者がいないので対応できない」としている。