かんぽ生命保険の不正販売を報じた番組を巡ってNHK経営委員会が2018年に上田良一会長(当時)を厳重注意した問題の議事録の開示を巡り、経営委が今年2月に第三者の審議委員会から全面開示するよう答申で指摘された後も一部を黒塗りにする部分開示の方針で議論を進めていたことが、23日わかった。だが答申と異なる判断は放送法違反とされる恐れがあるという弁護士の見解が示されると、一転して全面開示に傾いていた。
経営委は会長への厳重注意を巡る議事録の全面開示を拒否してきたが、審議委が2度、全面開示を求めたことで今月ようやく公開。これを受け、経営委は2月の2度目の答申から今月6日までの10回分の議事録も23日に一括公表した。
議事録によると、議論は全面開示、非開示双方の問題点などを整理して進行。当初は「非公表を前提とした議論を公表することは信頼を裏切る」「一度出さないとした以上、国会でも出さないと言ってきたので国会軽視にもつながる」などの意見が出た。5月11日には、公表済みだった議事経過に記された部分以外は黒塗りにする意見に過半数の委員が同調した。
ところが、続く5月25日と6月8日の経営委で監査委員が「答申と異なる議決をすると定款に違反し、定款順守を定めた放送法違反とみなされる恐れがある」とする弁護士の意見を伝えると流れが一変する。NHK定款に「情報公開基準に基づいて情報公開を行う」とあり、その基準に「審議委員会の意見を尊重」すると定めていることが、指摘の根拠に挙げられた。経営委は「今までの議論はもう成り立たない」などとして答申通りの方向に傾き、次の6月22日の会合で委員12人のうち11人の賛成多数(1人は棄権)により、全面開示の方針が裁決された。【稲垣衆史】
宍戸常寿・東京大大学院教授(憲法学)の話
ガバナンス(企業統治)の最後の防衛線とも言える監査委員会が機能したが、裏を返せば経営委自体が機能していない。本来は制度的に自分たちができることなのかをまず検討し、動ける範囲を整理したうえで議論しなければいけなかった。会長への厳重注意の際も番組介入の恐れがあり、専門家に意見を聞くべきだった。制度的に責任を負っている組織としての認識がいまだに甘く、放送制度に詳しい委員の人選も必要だ。権限を整理したうえで議論を進めるように経営委の事務局体制を強化しなければいけない。