難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者に薬物を投与したとされる嘱託殺人事件は23日で、医師2人の逮捕から1年を迎えた。動機や役割分担など謎は残されているが、証拠の量が膨大で、初公判の日程は見通せない。今年になって医師1人の父親を殺害したとされる事件も発覚する中、証拠を絞り込む手続きは長期化しそうだ。
昨年7月23日、京都市中京区のALS患者林優里(ゆり)さん=当時(51)=への嘱託殺人容疑で、ともに医師の大久保愉一(よしかず)被告(43)、山本直樹被告(44)が京都府警に逮捕された。ツイッターで知り合った林さんから依頼を受け、共謀して19年11月30日に薬物を投与して殺害したとされる。
さらに府警は今年5月、11年に山本被告の父親=当時(77)=を殺害したとして、医師2人と山本被告の母親の淳子被告(76)を逮捕した。遺体は司法解剖されずに火葬されたが、被告らのパソコンに殺害計画のメールが残されていたという。
大久保、山本両被告は20代だった医学生の頃に知り合ったとされるが、具体的な関係性は明らかになっていない。大久保被告は安楽死を是認する考えや、高齢者医療を否定する内容の投稿をツイッター上などに行っていた。そうした思想が二つの事件とどう結び付くのか、法廷での言動に注目が集まる。
京都地裁では現在、裁判の争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きが行われており、大久保被告は8回、山本被告は2回の期日が開かれた。地裁は6月、嘱託殺人罪などと父親への殺人罪を併合審理することを決定。一括して裁判員裁判の対象とするかは未定だが、殺人事件の証拠を精査するため、手続きにはさらに時間がかかりそうだ。