2011年の原発事故当時、18歳以下だった福島県民を対象に県が実施している甲状腺検査で、25歳時の受診率が1割未満にとどまっている。事故から10年が経過して
被曝
(ひばく)への不安が軽減されたことや、県外在住で受診が難しいことが要因とみられる。県は検査を希望する人が受けやすいよう、他県の医療機関に協力を求めて検査体制の拡充を進める。
甲状腺検査は県民健康調査の一つで、受診は任意だ。超音波画像で甲状腺がんなどの疑いが見つかれば血液検査などを行う。20歳までは原則2年おき、20歳以上は5年おきに受診する。がんの疑いがあれば医療機関で経過観察して検査の頻度を増やし、甲状腺切除の手術を受ける場合もある。
県や県立医大などでつくる県民健康調査検討委員会が7月に示した最新データ(今年3月末時点)では、対象の1992年度~95年度生まれ計8万7694人のうち、25歳の検査を受けたのは8・7%(7621人)だった。最初の検査(11~13年度)81・7%、2回目(14~15年度)71・0%、3回目(16~17年度)64・7%に比べても大幅に減った。
この10年の知見で、甲状腺がんと被曝との関連性は専門家の議論でも認められていない。県は、子どもたちが県外に進学、就職し、親元を離れて生活するようになったことも受診に影響したとみている。
一方、検査の約3割は県外で行われている。県立医大を通じて協力を要請した県外の127指定医療機関で受けられ、県は「不安な人が円滑に受診できる態勢作りが必要」としてさらに拡大を目指す。検討委の星北斗座長は7月26日の会合で「(検査の意義や)アクセスの良さを理解した上で参加するバランスを取っていくのが大事。今後どうすべきか考えたい」と述べた。
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「面倒くさいから受けなくていいや」。事故当時中学2年で、福島市出身の男性会社員(24)は、20歳を最後に検査を受けないと母親に伝えた。
11年8月に受けた最初の検査で精密検査が必要と判定され、県立医大で半年~1年に1回の頻度で検査を続けた。異常や発症は見られず、14年に神奈川県の大学に進学したが、同県の指定医療機関が自宅から遠く、検査は帰省時に受けていた。
だが、社会人になってからは福島市以外での検査手続きも分からず、「仕事の合間に受けるほどの優先事項ではなくなった」。母親は「これまでの検査で異常はなく、本人の意思を尊重するが、もし発症したら、検査をやめたことを後悔するかもしれない」と不安もぬぐえない。