《五輪で異例の摘発》「脱いでいるところが見えますよね」 年商3億近い人気風俗に“史上初の公然わいせつ罪”適用――東京五輪の光と影 から続く
開会式直前の関係者“辞任ドミノ”に始まり、メダル候補のまさかの敗戦やダークホースによる下馬評を覆しての戴冠劇、コロナ禍で開催され、明暗含めて多くの話題を呼んだ東京オリンピック。ついにその長い戦いも閉幕しました。そこで、オリンピック期間中(7月23日~8月8日)の掲載記事の中から、文春オンラインで反響の大きかった記事を再公開します。(初公開日 2021年7月25日)。
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ピンクサロン、通称ピンサロは、キャバクラなどと同様に「店員の接待が可能な飲食店」で、男性客と女性店員が“自由恋愛”をする場というのが建前の店だ。しかし実態はソープランドなどよりも安価な風俗店であり、全国の繁華街に存在している。
今年5月に上野のピンサロ店「マジックバナナ」が摘発されるまで、警視庁がピンサロ店に公然わいせつ罪を適用したことは一度もなかった。(全2回の2回め/ 前編 を読む)
この異例の摘発には、とある人物が関係していると言われている。全国紙社会部記者が明かす。
「今年2月に、上野警察署のトップに鈴木佳枝署長が就任しました。鈴木署長は警視庁のノンキャリで初の女性警視正となった有能な人ですが『風俗嫌い』で有名なんです。彼女が署長に就任してから、いわゆる”ヌキ”ありの性的なサービスを提供していた外国人マッサージ店の摘発などが管轄エリアで続いています。風俗店の経営者からも恐れられていますが、今回はピンサロがやり玉に上がったということでしょう」
オリンピックやサミットがあると風俗が取り締まられる
加えて、7月23日に開会した東京オリンピックも摘発を後押しした。これまでも、オリンピックや万博、サミットなどの国際的なイベントがあるたびに日本の警察は風俗店の取締りを強化してきた経緯があるという。
風俗情報誌「俺の旅」編集長の生駒明氏が解説する。
「2005年の横浜開港150周年のときには、横浜市内にある黄金町の“ちょんの間”が一斉摘発されました。2008年の洞爺湖サミットでは札幌で、2016年の伊勢志摩サミットでは渡鹿野島で、防犯や美観を口実に風俗店の取り締まりが強化されました。世界の目が一斉に集まる時に、国内の”恥部”を見せたくないということでしょう。1964年の東京オリンピックでも、都内の風俗店が取り締まられました。歴史は繰り返すということでしょうか」
風俗店の取締りを筆頭とする「盛り場対策」に警視庁は近年力を入れており、メイドカフェを装って接待サービスを行っていた秋葉原の店舗を摘発したり、麻布界隈の不良外国人の取り締まりを強化するなどしてきた。「マジックバナナ」が店を構えていた上野では、今年4月にストリップ劇場の「シアター上野」も摘発されて話題になった。
ピンサロが生まれたのは1950年の大阪
生駒氏がつづける。
「ピンサロの歴史は、1950年ごろに大阪のミナミでアルサロ(アルバイトサロン)が誕生して始まりました。それまでの風俗店と異なり前金の明朗会計システムで、安価なこともあって“本番なしの風俗業界”の嚆矢として人気が爆発しました。複数人とプレイができる“花びら回転”やコスプレの導入など時代に合わせて進化を続けて現在まで生き延びてきたんです。
10年以上前、横浜にジンジンという“伝説の店”があったのですが公然わいせつで摘発されてなくなりました。ピンサロである種の”違法行為”が行われているのは事実なので、摘発について文句を言うつもりはありません。ただ、古くは吉原の遊郭などがあり、戦後のGHQ方針や売春防止法、取り締まり強化などを経てたどりついたのが今の風俗業界で、警察当局も普段は黙認していたわけです。
こうした風俗店が完全になくなればアンダーグラウンドに潜るかもしれません。働く人にとっては生活の手段ですし、いまや風俗産業は男性向けだけでなく女性向けも増えています。風俗産業が完全に死滅するまで締め付けるのが本当にいいことなのか……」
異例の摘発を受け、ピンサロ業界ではいま戦々恐々とした空気が漂っているという。
「人気店ほど目を付けられやすいので、多くの店がこれまで以上に目立たないように商売しようという方針のようです。地域から敵視されれば通報されてすぐに摘発対象になるので、ゴミや騒音などで問題を起こすことはご法度。リピーターのお客さんを相手に細々と運営する、という声も聞きます」
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))