大きな地響きとともに、山あいの集落を大量の土砂が襲った。15日早朝に長野県岡谷市で起きた土石流。地域住民は声を震わせながら当時の状況を語り、犠牲になった母子3人を知る人は悲報に言葉を詰まらせた。
「ゴロゴロ」――。15日午前5時頃、窓外から響く雷のような音に、現場近くの男性会社員(43)が驚いて外に飛び出すと、目の前の一軒家に大量の土砂が流れ込んでいた。その2階窓からは人びとが運び出され、泥をかぶった子供らが心臓マッサージを受けていた。
消防車両のけたたましいサイレンに驚いた近隣の無職男性(82)も、この家に駆けつけた。付近一帯は泥の臭いが漂い、茶色く濁った泥水が道路を覆っていた。「こんなことが現実に起こるなんて。孫と同世代の子供が犠牲になってしまった」と声を震わせた。
亡くなったのは同県辰野町の巻渕
友希
(ゆき)さん(41)、次男で辰野中1年の春樹君(12)、三男で辰野東小2年の
尚煌
(なおき)君(7)。この家は友希さんの義父の実家で、普段は誰も住んでいなかった。友希さんらは毎年ここでお盆を過ごし、今年は家族8人で14、15日に滞在する予定だった。3人は2階山側の部屋で就寝していた。
突然の知らせに、3人を知る人は悲しみに暮れた。友希さんと保育園の「ママ友」だった30歳代女性は、「よく子育てのアドバイスをもらった。姉のように慕っていた」と悼んだ。
友希さんは高校時代にバレーボール部で活躍し、亡くなった兄弟もバレーをしていた。春樹君と同じ中学の女子生徒(13)は、春樹君が学校で楽しそうにボールを追う姿をよく見かけた。「尚煌君も道ですれ違うと、ニコニコして手を振ってくれた。仲の良い兄弟だったのに」と言葉を詰まらせた。
市内では2006年7月にも、豪雨で土石流が発生し、8人が亡くなった。今回の現場周辺は、土砂災害警戒区域に指定されている。
長野地方気象台によると、現場近くの観測地点では、12日から15日午前5時までの降水量が、平年の8月1か月間の約2・5倍に相当する379ミリを記録。市は付近に高齢者等避難(警戒レベル3)を発令していたが、避難指示(同4)に切り替えたのは土石流発生後の午前6時だった。
今井竜五市長は記者会見し、「『雨の状況を考えながら避難してください』とアナウンスしていた。(事態を)重く受け止めている」と述べ、対応が適切だったか検証する考えを示した。
また、同県王滝村でも15日に村道の一部が崩れ、9世帯14人が孤立状態になった。県は16日午前10時半から、県消防防災ヘリコプターで救助にあたっている。