広島への原爆投下後に降った「黒い雨」を巡る訴訟に絡み、国が原告以外も救済する方針を示したことを受け、弁護団と支援団体が被爆者健康手帳の申請に関する相談会を企画し、26日に予約受け付けを始めたところ申し込みが殺到し、2時間で定員の80人に達した。予想を上回る反響の大きさに支援団体は驚く一方、「とても対応できない」と悲鳴を上げ、行政による支援体制の整備を訴えた。
予約の受付窓口となった広島県原爆被害者団体協議会(佐久間邦彦理事長)では、開始直後の午前10時過ぎから電話は鳴りやまなくなり、相談員5人がかかりきりに。「電話がつながらない」といって事務所を訪ねてきた人もいた。午前中に9月18、19日の2日間の予約が全て埋まった。
今回の申込者はこれまでに声を上げられなかった人たちも多いとみられ、潜在的な手帳申請希望者は相当数に上る可能性がある。支援団体などは相談会後、県と広島市に集団申請を進める予定だが、全ての申請希望者に十分な対応ができない恐れもあり、佐久間理事長は「誰でも手帳を申請でき、行政が受理できる体制を早く整えてほしい。審査基準も早期に改定する必要がある」と訴えた。
広島市援護課の宍戸千穂課長は「申請は受けるが、審査基準が変わっていない現状では従来と同じ対応をせざるを得ない。市も、協議で現場の意見を伝えるが、国に早く結論を出してもらう必要がある」としている。
区域外で雨を浴びた原告84人が手帳の交付などを求めた黒い雨訴訟は7月、広島高裁が原告全員を「被爆者」と認定し、菅義偉首相が上告見送りを表明して判決が確定。菅首相は、「原告と同じような事情」にあった人も救済する方針を示したが、具体的な方法や時期はまだ示されていない。
相談員として電話対応をした原告の高東征二さん(80)は「みな手帳を待ち望んでいたような感じ。この裏には、黒い雨を浴びて、病気に苦しんできた人生がある。早く手帳を渡したい」と話した。【小山美砂】