自民党の岸田文雄・前政調会長が出馬の意向を固め、総裁選は複数候補で争われる見通しとなった。菅首相(党総裁)の無投票再選を避けるため、党内では岸田氏への待望論が強まっていた。選挙戦は、首相と2度目の挑戦となる岸田氏を軸に展開しそうだ。
「他派閥で支援してくれる人もいる。首相との違いを打ち出したい」
岸田派(46人)を率いる岸田氏は25日、衆院議員会館の事務所で同派幹部と面会し、こう決意を伝えた。
昨秋の総裁選で首相に敗れた岸田氏は、総裁選について「チャンスがあれば挑戦したい」と繰り返してきた。新型コロナウイルス禍で現職首相に挑めば「無用な政局を起こしたと批判される」(幹部)との慎重論も派内にくすぶっていた。
ただ、報道各社の世論調査で、菅内閣の支持率は軒並み過去最低を記録。22日の横浜市長選で、首相が全面支援した小此木八郎・前国家公安委員長が敗れると、党内では「衆院選前に首相は代わってほしい」といった声が飛び交った。党青年局からは、複数候補で政策論争を交わす総裁選の実施を求める意見が出た。
下村政調会長や高市早苗・前総務相が出馬に意欲を示しているが、推薦人20人確保のメドはたっていない。こうした状況に加え、岸田派座長で参院議員だった林芳正・元文部科学相が、将来の総裁選出馬を視野に、次期衆院選に山口3区からくら替え出馬することも、岸田氏の判断に影響したようだ。
前回総裁選では、党内7派閥のうち5派閥が首相を支持し、首相が圧勝した。今回も主要派閥は引き続き支援するとみられ、首相が優勢な状況は変わらない。二階幹事長は24日、他派に先駆け、二階派(47人)としての再選支持を宣言した。岸田氏の頼みの綱で、最大派閥・細田派(96人)に影響力を持つ安倍前首相も、再選支持を周囲に明言している。
それでも、岸田派中堅は「派閥幹部が首相支持でも、造反票を期待できる」とそろばんをはじく。「フルスペック」で行われる今回の総裁選は、国会議員票と同数の党員・党友票の行方が、勝敗を左右する。読売新聞社の8月の全国世論調査では、「次の首相に誰がふさわしいか」の問いで、岸田氏は4%にとどまっており、どこまで知名度をアップさせられるかがカギを握りそうだ。