【日本の選択】顕著な「菅離れ」で見通し不透明 岸田氏「中国に対峙できるのか」 高市氏「国民的な知名度に課題」

昨秋の自民党総裁選では、二階俊博幹事長が「菅義偉官房長官(当時)の支持」を打ち出したことで、雪崩を打ったように各派閥が菅支持に動いた。今回も二階氏は早々に「菅首相(総裁)再選支持」を打ち出した。しかしながら、いまだに決定打となるには至っていない。
前回の総裁選と、今回の総裁選では、3つの違いがある。
1つは、安倍晋三前首相が突然辞任したことで、現職首相が候補者にいないなかで行われたのが前回の総裁選であった点だ。現職の首相は圧倒的に強い。自民党総裁選の歴史を振り返ってみて、現職が敗北したのは1978年11月の福田赳夫首相のときだけだ。それ以外では、すべて現職が勝利している。仮に菅首相が敗北することになると2例目となる。
2つ目は、全国の党員・党友による投票が行われる点だ。前回の総裁選では国会議員による投票だけだったが、今回は全国の党員・党友の動向が大きな影響を持つ。菅首相にとって気がかりなのは、自民党支持者の中での「菅離れ」が顕著な点だろう。
産経新聞とFNNの合同世論調査(21、22日実施)で、自民党支持者に「次の首相にふさわしい人物」を尋ねたところ、菅首相を選んだのは、わずか5・1%に過ぎなかったという。なお、現職の福田首相が敗れた総裁選は、党員・党友による予備選が初めて導入された総裁選だった。
全国の自民党員・党友がいかなる判断を下すかは、派閥の動向を分析しても見いだすことはできない。菅再選が決定と断言できないのは、全国の自民党員・党友の動向を把握することが難しいためだ。
そして、3つ目は衆院選を直後に控えた総裁選になる点だ。いくら派閥の領袖(りょうしゅう)が菅支持を打ち出したところで、「菅首相のままでは衆院選敗北が濃厚だ」と浮足立つ、中堅・若手議員の投票行動は予測できない。
菅首相が盤石の態勢で臨む総裁選とは言い難いのが現実だ。
しかし、予想される対抗馬を見ても、圧倒的に国民の支持を受けている候補者はほとんどいない。
最有力候補とされる岸田文雄前政調会長は、二階氏の幹事長再任を否定した。公家集団と評される宏池会の政治家にしては珍しく挑戦的だ。しかし、果たして岸田氏が中国の覇権主義に対峙(たいじ)するにふさわしい指導者なのかと問われれば、否定的にならざるを得ない。
保守派が期待を寄せる高市早苗前総務相も、国民的な知名度が高いとはいえず、総裁選で勝利するのはなかなか難しいだろう。
いずれにせよ、見通しの不透明な総裁選だ。ただ、総裁選が行われること自体が自民党の活力を生む。激しい政策論争を通じて、国民に自民党の存在意義をアピールする総裁選を期待してやまない。 =おわり
■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在、大和大学政治経済学部准教授。専攻は政治哲学。著書・共著に『「リベラル」という病』(彩図社)、『偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)、『なぜ彼らは北朝鮮の「チュチェ思想」に従うのか』(扶桑社)など。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。