消費者庁は、2022年6月までに施行される改正公益通報者保護法に基づき事業者がとるべき措置に関する指針をこのほど公表した。改正法が事業者に対して通報対応体制の整備などを新たに義務づけることに伴い定められた。 指針には、不正の告発などをした通報者に対して、降格や減給などの不利益な扱いをした場合には、懲戒処分など適切な措置をとるよう求めることなどが盛り込まれた。 2004年に制定されて以来、はじめて内容面での改正がおこなわれた公益通報者保護法だが、通報者の保護はいまだ不十分との声もある。 今回の指針公表をどうみるべきか。大森景一弁護士に聞いた。 ●「通報者の探索」禁止盛り込まれたが、踏み込み不足 今回公表された指針はどのようなものでしょうか。 今回の指針は、改正公益通報者保護法11条の規定に基づき、事業者がとるべき措置を具体的に明らかにしたもので、公益通報対応業務従事者の定めや内部公益通報対応態勢の整備に関する規定が設けられています。 しかし、全部でわずか3ページ超しかなく、うち1ページ超は定義規定ですので、非常にシンプルなものにとどまっているといえます。 また、内容についても、これまでの「民間事業者向けガイドライン」(公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン)をほぼ踏襲するもので、目新しい規定はほとんどありません。むしろ、詳細で具体的だった民間事業者向けガイドラインを抽象的にしたもののような印象をうけます。 これまでのガイドラインとは具体的にどのように違うのでしょうか。 民間事業者向けガイドラインには、「リニエンシー制度」(自主的な通報者に対する懲戒処分などを減免する制度)のような先進的な取り組みについても記載がなされていましたが、今回の指針は当たり障りのないものにとどまっています。 内部通報を重視する世界の潮流からすれば、もう少し踏み込んだ内容にすることもできたのではないかと思います。 ただ、今回の指針が「通報者の探索」(通報者を特定しようとする行為)を禁止したことには注目しています。これは、これまでの民間事業者向けガイドラインには規定されていなかった内容で、この点が明示されたことには意味があると思います。 なお、消費者庁では、指針の策定に伴い、民間事業者向けガイドラインに記載されていた内容を盛り込んだ指針の解説を策定し、これまでの民間事業者向けガイドラインなどを廃止する方向であると言われています。
消費者庁は、2022年6月までに施行される改正公益通報者保護法に基づき事業者がとるべき措置に関する指針をこのほど公表した。改正法が事業者に対して通報対応体制の整備などを新たに義務づけることに伴い定められた。
指針には、不正の告発などをした通報者に対して、降格や減給などの不利益な扱いをした場合には、懲戒処分など適切な措置をとるよう求めることなどが盛り込まれた。
2004年に制定されて以来、はじめて内容面での改正がおこなわれた公益通報者保護法だが、通報者の保護はいまだ不十分との声もある。
今回の指針公表をどうみるべきか。大森景一弁護士に聞いた。
今回公表された指針はどのようなものでしょうか。
今回の指針は、改正公益通報者保護法11条の規定に基づき、事業者がとるべき措置を具体的に明らかにしたもので、公益通報対応業務従事者の定めや内部公益通報対応態勢の整備に関する規定が設けられています。
しかし、全部でわずか3ページ超しかなく、うち1ページ超は定義規定ですので、非常にシンプルなものにとどまっているといえます。
また、内容についても、これまでの「民間事業者向けガイドライン」(公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン)をほぼ踏襲するもので、目新しい規定はほとんどありません。むしろ、詳細で具体的だった民間事業者向けガイドラインを抽象的にしたもののような印象をうけます。
これまでのガイドラインとは具体的にどのように違うのでしょうか。
民間事業者向けガイドラインには、「リニエンシー制度」(自主的な通報者に対する懲戒処分などを減免する制度)のような先進的な取り組みについても記載がなされていましたが、今回の指針は当たり障りのないものにとどまっています。
内部通報を重視する世界の潮流からすれば、もう少し踏み込んだ内容にすることもできたのではないかと思います。
ただ、今回の指針が「通報者の探索」(通報者を特定しようとする行為)を禁止したことには注目しています。これは、これまでの民間事業者向けガイドラインには規定されていなかった内容で、この点が明示されたことには意味があると思います。
なお、消費者庁では、指針の策定に伴い、民間事業者向けガイドラインに記載されていた内容を盛り込んだ指針の解説を策定し、これまでの民間事業者向けガイドラインなどを廃止する方向であると言われています。