人気の電動キックスケーター、歩道は走れず…道交法無視の利用横行

立ち乗りの二輪車「電動キックスケーター」の運転マナーが問われている。手軽な移動手段として人気で、環境への負荷が少ないことから規制緩和の議論が進むが、道路交通法を無視した利用が横行し、重大な事故も起きているためだ。大阪府警は販売時の運転ルールの周知が不可欠だとして、販売者への働きかけに乗り出した。(中瀬有紀)

7日夕の大阪・ミナミ。多くの人が行き交う歩道上を、電動キックスケーターの女性がすり抜けていった。ヘルメットなしで、ナンバープレートも付いていない。街中では日常的に見られる光景だが、法律違反だ。
電動キックスケーターは道交法上、ほとんどが原付きバイクとして扱われ、公道では運転免許が必要で、歩道は走れない。サイドミラーやナンバープレートの整備やヘルメット着用が義務づけられている。モーターの出力が600ワットを超える場合は、普通自動二輪車などとみなされる。
警察官から整備不良で注意された経験がある男性(52)は「購入時は何も言われなかった。通勤で使うために買ったが、整備が必要なら乗らない」と話した。

販売大手「オオトモ」(大阪市)によると、電動キックスケーターを含む次世代モビリティー(移動手段)の昨年の販売台数は4700台で、前年の2900台から増加。コロナ下で感染リスクの低い移動手段として注目されているという。
普及に伴って、事故や違反が目立ち始めている。
警視庁は先月、信号無視で事故を起こしたとして、自動車運転死傷行為処罰法違反(無免許危険運転致傷)などの疑いで20歳代の女を書類送検。大阪市内でも5月に歩道上で歩行者をはねて重傷を負わせ、逃げたとして、30歳代の男が府警に逮捕された。
府内での事故は昨年は1件だったが、今年は8月末時点で8件に上り、府警は繁華街での取り締まりを強化している。警告件数は昨年の22件から今年は225件(7月末時点)に急増。書類送検・逮捕に至ったケースも4件あった。