1999年に埼玉県桶川市で起きたストーカー殺人事件で娘の猪野詩織さん=当時(21)=を亡くした父憲一さん(71)が8日、京都市上京区の府警本部で若手警察官向けに講演した。捜査の怠慢で事件を防げなかった当時の警察の問題点を語り、「小さな悩みでも確実に聞き、ストーカー被害者に勇気を与えてほしい」と訴えた。
詩織さんは、一時交際した男や仲間から付きまといなどの嫌がらせを受け、埼玉県警に相談したものの「民事不介入」と追い返された。憲一さんは、県警に告訴の取り下げを要請され、調書を改ざんされた経験を振り返り、「警察には本当に助けてほしかった」と憤った。
娘の思いを背負い、ストーカー規制法の改正議論に加わってきた。衛星利用測位システム(GPS)機器の悪用などを規制した改正法が今年施行されたことに触れ、「ストーカー被害の件数は高止まりしている。皆で『安全の壁』を張り巡らして事件をなくしたい」と力を込めた。
また、メディアスクラム(集団的過熱取材)や詩織さんの名誉を傷つける報道を行ったマスコミに苦言を呈し、被害者遺族の心情に配慮するよう求めた。
講演は府警が憲一さんに依頼して実現。ストーカー事案に対応する警察官約20人が耳を傾けた。