「ジュース買ってあげる」――。2019年7月、参院選の街頭演説で安倍晋三前首相にヤジを飛ばした20代の女性に、北海道警の警察官がこう声を掛けるなどして、デモ参加者を排除した詳細な状況が、法廷で明らかになった。
ヤジを飛ばして警察官に排除されたとして、札幌市の男女2人が道に損害賠償を求めた訴訟で9日、証人尋問が札幌地裁(広瀬孝裁判長)であり、原告の桃井希生さん(26)に対処した女性警察官が出廷した。
女性警察官は、桃井さんのヤジを制止し、その場から移動させた。その後、札幌駅近くのビルから出てきた後に突然走り出した桃井さんは「明らかに不審だった」と説明。その後、桃井さんを追跡し「ジュース買ってあげる」と持ち掛けた。
この発言について、原告側代理人が意図をただすと、女性警察官は「顔が赤らんでおり、過呼吸や熱中症の恐れがあると思った」と述べた。さらに、原告側が「飲みたい」と答えたらどうするつもりだったかを尋ねると「『飲みたい』と言えば、上司に相談するつもりだった」と説明。傍聴席がざわついた。
「幼児をあやすような扱い」
10日出廷した桃井さんは「幼児をあやすような扱いで、侮辱されていると思い怒りが湧いた」と述べ、女性警察官のつきまといは約1時間に及んだとして「どこまで付いてくるのか不安だった」と語った。
一方、原告の大杉雅栄さん(33)への対応について、現場で警備に当たっていた男性警察官は9日の法廷で、大杉さんをその場から移動させたのは正当な行為だったと主張した。「安倍辞めろ」などと叫んだ大杉さんに対し「お前が帰れ」などとする「怒号を聞いた」と主張、「互いが激高してトラブルになる可能性があった」と主張した。
これに対し、10日に出廷した大杉さんは「(怒号を聞いた)記憶はない。納得のいく説明がないまま排除され、権利侵害だ」と訴えた。【高橋由衣】