新型コロナ対策の「持続化給付金」を騙し取った面々に、とうとう現役警察官が加わった。警視庁は9月3日、持続化給付金100万円を詐取した疑いで、立川署交通課の巡査部長や60代の妻ら計4人を書類送検した。警視庁担当記者の話。
「巡査部長は、荷物配送のアルバイトをしていた妻を家政婦だと偽り、コロナで売り上げが以前より減ったと嘘の申請をしていたようです。これまで扶養家族に入れるため、アルバイトでの年収を103万円以下にしていましたが、給付金100万円を受け取ったことで、そのラインを優に超えてしまったのが運の尽きでした」
今年3月、扶養に入る条件を満たさなくなったことを、税務署を通じて立川署が把握。不審に思って調査を開始した。巡査部長自身は当初、「妻が勝手にやった」などと誤魔化していたが、妻にまで聴取対象が広がり、観念したという。
きっかけは“愛人”の一言
しかも――。
「実は書類送検された4人のうち1人は、巡査部長の愛人でした。3年ほど前から関係を持っていたという50代女性です」(同前)
給付金詐欺に手を染めるキッカケは、愛人のこんな一言だった。
「奥さんがアルバイトをしているのだから、給付金をもらえるのでは?」
こともあろうに、彼女の言葉を真に受けた巡査部長。妻を「絶対バレないから」と説得し、計画を進めていく。愛人の知人で、80代の男性が申請などの具体的な手続きをしたという。
「100万円は夫婦で半々ずつ山分けしました。ただ、巡査部長の取り分だった50万円は、愛人へのプレゼントなどで費消された。本人は『交際費の足しにしたかった』と供述しています」(前出・警視庁担当記者)
目先の100万円のために逃した「退職金」と「再就職」
巡査部長は9月3日付で懲戒免職の処分が下されたが、警察界隈で注目されたのは、定年まであと1年に迫った巡査部長の年齢だ。
警察関係者は呆れる。
「巡査部長とはいえ、退職金は2000万円を超える。再就職先も警視庁が面倒をみてくれるはずでした。彼のような交通課の場合、普通なら交通安全関連の再就職が決まっていたでしょう。それを目先の100万円のために逃したことになります」
今年6月には経産省のキャリア官僚や高校生3人が相次ぎ逮捕されるなど、同種の事案では、逮捕にまで至るケースが目立つが、
「巡査部長は書類送検だったため、顔や実名は報じられませんでした」(同前)
警視庁は「厳正な規律保持を徹底したい」とするが、身内に甘い体質では――。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年9月16日号)