新型コロナウイルスのワクチン接種の有無について、児童生徒に挙手させて確認したとして、教育委員会が謝罪する事例が相次いでいる。同調圧力や差別につながる恐れがあるためだ。一方、接種の有無の把握そのものを不適切とする学校もあり、戸惑う教員も。子どもたちの理解を深めながら、接種をどう進めるか――。現場は腐心している。
「副反応で定期テストなどを欠席する生徒を事前に把握したいが、何も聞けなくなった」。愛知県内の男性教諭(45)は、困惑した様子で話す。勤務する公立中学では現在、生徒のワクチン接種の有無について他者に知られない形で把握することも許されていないという。
同県内では今月7日、犬山市教委が、市立中学2校で部活動や授業の際に、ワクチンを接種したかどうか、生徒に挙手させて確認していたと発表。これを受けて名古屋市教委は市立学校を全校調査した結果、小中高の計42校で挙手などでの確認が行われていたと明らかにした。ほかにも複数の市町が、児童生徒への接種の有無の確認があったと発表した。
これらの教委の多くは、挙手での確認を問題視したが、中には「接種についての問いかけ自体が不適切だった」とする自治体も。男性教諭は「個人情報の保護は必要だが、やり過ぎでは。大切なことは、接種の有無を秘密にすることでなく、差別しないように教育することなのに」と話す。
文部科学省は今年6月、生徒への集団接種についての留意点を教委に通知した際、接種の有無で差別やいじめが起きないよう、接種は強制でないことや、身体的な理由などで接種できない人や望まない人がいることを指導するよう求めた。
同省健康教育・食育課の担当者は、挙手での確認について「同調圧力や差別につながるので、不適切」と指摘する。一方、健康上の配慮をしなければならないケースもあるとして、接種の有無や予定を聞くことは否定せず、「接種の情報は慎重に取り扱い、他者に知られないようにするなど配慮が必要だ」と述べた。