地元に伝わる明智光秀の口碑伝承、解説ガイドに 岐阜・恵那

岐阜県恵那市観光協会明智支部は「明智姓の始まりと光秀誕生」と題した郷土史解説ガイドを発行した。NHK大河ドラマでは、明智光秀が主人公の「麒麟がくる」(2020年放送)に続き、23年には松本潤主演で徳川家康を主人公とする「どうする家康」の放送が予定されている。光秀が再登場する可能性が高いことから、地元に伝わる光秀の口碑伝承を観光振興に継続していくのが狙い。史料考証と執筆を担当した土岐市駄知町の郷土史家、籠橋一貴さん(62)は「光秀の話だけでなく、明智遠山氏と関係のある東美濃の山城も掲載してあり、このガイドを手に戦国時代の史跡や山城を周遊すれば楽しめると思う」と話す。【立松勝】
口碑伝承とは人から人へ語り継がれた口伝や、石碑に残る記録が伝えられたもので、古代から「口碑伝承をおろそかにするなかれ」と歴史の伝承を軽視してはいけない例えとして使われている言葉。
籠橋さんは18年、「明智光秀 東美濃物語」を発刊した経験を活かし、「明智遠山氏は別系統の家だから、明智光秀とは関係ない」として歴史学者らに退けられてきた遠山氏の歴史に着眼点を置いた。旧恵那郡(恵那市、中津川市)を統治した遠山氏と、隣接する旧土岐郡の土岐氏との嫁取りや婿養子によって血縁関係が結ばれていた名家の縁組を解明しながら、明智町に残る光秀口碑伝承の謎について追跡調査を展開。その結果を自説として組み立てた「土岐明智氏、明智遠山氏関係系図」の労作を掲載した。
調査に当たり、「明智軍記」や「美濃国諸旧記」など作者不明の軍記物は参考文献から除外し、織田信長の正史「信長公記」をはじめ、江戸時代初期に成立した「土岐系図」(寛永諸家系図伝所収)や、光秀の子と伝えられる妙心寺の僧・玄(げん)琳(りん)が作成した「明智系図」(続群書類従所収)などを重視し、光秀が生きた戦国時代の人間関係の血脈をたどった。
一方、遠山家に残る嫡伝系図や東美濃地域の古記録なども併せて精査した結果、籠橋さんは「東美濃で初めて明智姓を名乗った武将は宝治元(1247)年の恵那郡遠山荘淡気(たむけ)郷の明智三郎兵衛尉景重であり、明智氏発祥の地は恵那郡明智村」と確信を深めたという。
恵那市明智町の龍護寺にある明智遠山氏累代の墓石には、遠山氏の家紋「二つ引き両」と合わせて、土岐氏の「桔梗(ききょう)紋」も刻まれている。籠橋さんは「一つ一つ調べ直していくと、遠山氏と土岐氏は間違いなく血筋でつながっている。歴史学者が見ても面白い内容になった」と話す。
郷土史解説ガイドはA4判、62ページ。日本画家の香川玄太郎氏が作成した戦国時代の明智村のパノラマイラストを掲載したほか、「明智戦国紀行」の写真グラフや、東美濃の山城コーナーでは岩村城(恵那市)、苗木城(中津川市)、小里城、鶴ケ城(いずれも瑞浪市)、妻木城(土岐市)が紹介され、郷土史冊子と観光ガイドを兼ねた体裁となっている。1冊800円(税込み)。郵送の場合は1000円(税・送料込み)。恵那市内の観光施設で販売中。問い合わせは同市観光協会明智支部(0573・54・2111)。
かごはし・かずき
岐阜県恵那市明智町出身。金沢市の北信越柔整専門学校卒。土岐市国際交流協会会長や県多文化共生推進員を務める。日本大正村の役員だった元中学校教員の父、加藤真人さん(故人)の郷土史研究を受け継いだ。真人さんが籠橋家へ養子に入り、一貴さんが継承した。現在、土岐市駄知町で接骨院を開業している。講道館柔道二段。