軍事政権下のミャンマーで2007年9月、大規模な反政府デモを取材中の映像ジャーナリスト、長井健司さん(当時50歳)が治安部隊に射殺された事件から27日で14年。古里・愛媛県今治市で妹の小川典子さん(61)が墓前に追悼の祈りをささげた。ミャンマーは今年2月のクーデター後、国軍の厳しい弾圧で1000人以上の市民に犠牲者が出たとされる。「兄のことがよみがえり、怒りでいっぱいです」。小川さんは憤りを新たにした。
2011年から民政が続いたミャンマー。だが、国軍は今年2月にクーデターを起こし、アウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟から政権を奪った。抗議の声を上げる市民への弾圧は国際社会が批判を強める中でも厳しさを増し、ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会」は8月末、死者が1040人を超えたことを明らかにした。
長井さんが命を奪われたのは2007年9月、最大都市・ヤンゴンでの反政府デモの現場だった。デモには僧侶を中心に約10万人が参加。武力制圧で多くの死傷者が出たが、その後の民政への歩みにつながったとされる。
その後、再び混迷を深めるミャンマー。小川さんはこの日、「(民主化後に)揺り戻しはあると言われてきたが、やはり起こってしまった」と憂いを示した。かねて日本政府を通じ、兄の射殺の真相解明と、最後まで手にしたビデオカメラの返却をミャンマー側に求めており、今年のクーデター後も日本政府にこうした点を改めて要望書で伝えたが、進展はないという。
ミャンマーの現場で取材を続けるジャーナリストらに対しては「兄のように命を落とすようなことのないよう気をつけてほしいが、報道がなくなると関心が薄らいでしまう。活動を持続してほしい」。合わせて「若い方々の活動で、地道に、少しずつでも進展してほしい」と民主化に願いを込めた。
「この一年、自分では動けず、悔しい思いでいっぱいだったが、動けるような状況になれば足を運んで働きかけたい」と小川さん。改めて気持ちを奮い立たせた。【松倉展人】