東京電力福島第1原発事故に伴う風評被害に対する賠償で、個人で請求した果樹農家に対し、東電が事前に決めたルールより少ない額を提示していたことが明らかになった。賠償額に10倍近い差が出たケースもあり、福島県農民連は27日、国・東電とオンラインで交渉し、「記者会見して説明を」などと訴えた。【高橋隆輔】
東電は、2019年に果樹の一部について賠償の仕組みを変更。事故前5年の平均に、その年の全国的な価格変動を係数にして掛け合わせて基準価格を設定し、実際の販売価格との差額を被害と認定することにしていた。
この際、取引量の少ない月は正確な係数を計算できないため、調整しない取り決めだったが、個人請求した農家には、取引量の多い時期も調整しない月があった。基準価格が低くなったため実際の販売価格との差額も小さくなり、結果的に賠償額も抑えられた。
東電によると、半分以下や2倍以上など極端な係数になる場合は不正確と判断し、市場価格が跳ね上がった月も調整しなかったという。一方で、農協を通じた団体請求者には調整をしており、賠償額に10倍近い格差が生じたケースもあった。
この日の交渉で、農民連側は、団体交渉との間で格差が生じている点を追及した。東電側は「2倍を超えて相場が上がることに備えがなかった」と陳謝。故意性は否定し、農家には差額をさかのぼって支払うことを約束した。一方で、「各団体の個別の交渉への言及は控える」として、団体請求と対応が違う理由は説明しなかった。
農民連側からは不信感をあらわにする声が続出した。交渉後、根本敬会長は「東電は少数者をないがしろにしている。被害はきっちり賠償させる機運を高めたい」と話していた。