子どもの火遊びで2人死亡火災、母親に3160万円賠償命令…親の監督責任重く

子どものいたずらや遊びが重大な結果を引き起こし、親が高額の賠償金を支払うケースは少なくない。徳島市で2018年、住人2人が死亡したアパート火災では、男児(11)の火遊びが原因だったとして、徳島地裁が今月2日、母親に遺族への約3160万円の賠償を命じた。親に課せられる「監督責任」は大きい。(新谷諒真)
18年3月、徳島市北矢三町の2階建てアパートが全焼。男性(当時38歳)ら2人が死亡した。男性の遺族は19年、男児の母親に慰謝料など約4050万円の損害賠償を求めて提訴した。
訴訟では、母親が我が子に対する監督義務を尽くしていたかどうかが争点となった。
遺族側は「マッチで遊ぶ危険性は当時8歳の男児にも理解でき、母親が適切な指導を行っていれば、火災は簡単に回避できた」と主張。母親側は「男児の生活習慣に気を配り、それまで警察が関わる事態もなく、監督義務を十分履行していた」と反論した。
秋武郁代裁判官は判決で、火災原因について、男児がアパートの古紙置き場で友達とマッチで段ボールを燃やして遊んでいた際、建物に燃え移ったと認定。その上で、監督義務について検討した。
秋武裁判官はまず、火遊びで火災が発生しうることは男児にも簡単に理解でき、母親には火の危険性を十分に教えておく監督義務があったと指摘。
▽火災の約1か月前から男児の友達が火遊びをしているうわさがあった▽火災の直前、男児が「マッチ、マッチ」とつぶやきながら外出し、母親は「マッチは危ないよ」と言っただけでそれ以上注意しなかった――などの経過を挙げ、「母親は監督義務を怠った」と結論付けた。
母親側は判決を不服として17日に控訴。代理人弁護士は取材に「『マッチは危ない』という発言は、火遊びをやめるよう指導した証拠。監督義務は果たしている」と語った。遺族側の代理人弁護士は「コメントしない」としている。

子どもの行動に、親はどこまで責任を負うのか。
民法では、責任能力のない子どもが第三者に損害を加えた場合、親が賠償責任を負うと規定。一方、監督義務を尽くしていれば、責任は免れるとも定める。
だが、民事裁判では、予測が困難な事故でも、親の賠償責任は広く認められてきた。
こうした流れに一石を投じたのが、子どもが引き起こした事故を巡る訴訟で、最高裁が2015年に言い渡した判決だ。11歳の男児が校庭で蹴ったサッカーボールが道路に転がり、よけようとした高齢者のバイクが転倒した死亡事故で、判決は親の賠償責任を否定。「通常は危険がない行為で偶然生じた損害について、親の監督責任は問われない」とする判断基準を示した。
損害賠償請求訴訟に詳しい吉村良一・立命館大名誉教授(民法)によると、火遊びや線路への置き石といった危険な行為はこれに当てはまらない可能性が高いという。「親が子どもの生活全般に広く責任を負うという裁判所の考え方は、最高裁判決前後で変わっていない」と指摘する。