子どものネット依存脱却へ リアルなつながり、周囲の支えが鍵

兵庫県姫路市の家島諸島で小中高校生がネット無しで4泊5日の合宿をする「人とつながるオフラインキャンプ」。参加者には不登校などの課題を抱えながらネットに没頭する生活から一歩一歩抜け出す子どももいた。鍵は学校の先生や大学生ら周囲の支えだ。
「高校に行って友達と話したい」
「やっぱり高校に行って、友達と話したい」。キャンプ最終日の目標発表会で、県内の男子中学3年生(15)は力を込めた。中1の夏に勉強につまずいたのがきっかけで不登校になり、オンラインゲームにのめり込んだ。昨年からキャンプに参加し、少しずつ、リアルなつながりを築こうとしている。
オンラインゲームに手が伸びたのは、周囲と違い自分だけ学校に行けていないのが嫌だったからだ。そこで出会ったのは、同じような不登校の子どもたち。「親に言えない気持ちも話せて、わかり合える。居心地がよかった」。嫌になるとプチッと通話を切ることもできる。勉強しようと思うのに夜通しゲームをしてしまうこともあった。
転機は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う2020年3~5月の一斉休校だった。中学の先生が自宅に通って勉強を教えてくれた。それまでの遅れを取り戻したことがステップになり、休校が終わると、週1回、放課後の中学校に通うようになった。
「自分はゲーム依存なんだ」
20年9月、コロナ禍を受け、家島から三田市のアウトドア施設に場所を移したオフラインキャンプに初めて参加した。「自分はゲーム依存なんだ」と向き合うことを決め、週3日、不登校の生徒が学校復帰を目指す適応指導教室に通う目標を立てた。
その目標は達成したが、「同級生は受験や部活に忙しいのに、自分は…」と思うとゲームに向かってしまう。もう一歩を踏み出そうと、今年、再びキャンプに参加した。最初は周囲となじめなかったが、自炊で魚のおろし方を披露するとみんなが「教えて」と輪を作り、打ち解けた。「意見を発表すると、すぐに反応が返り、時々、ぶつかりあう。『けんかっていいな』って感じました」とかみしめるように語った。
立てた目標はゲームを1日8時間から6時間に減らし、午後11時半には寝ること。その先の目標は通信制の高校への進学だ。
「成長してくれたね」。最終日に目標を発表するこの男子中学生の姿を涙を流して見つめる大学生がいた。県立大3年の桑鶴碧衣(あおい)さん(21)。1年前のキャンプでメンター(相談役)として男子中学生と向き合った。初対面の印象は人前で発表するのを嫌がる内気な子だった。ネットの使い方を尋ねると「ゲームが心のよりどころ」と打ち明けられた。
「否定せず、彼なりの良さをほめよう」。当時、桑鶴さんはとにかく明るくしゃべりかけた。男子中学生が自炊で片付けや皿洗いを率先してやる姿に気づくと「ありがとう」、グループで小さな声でも意見を言えたら「めっちゃいいやん」と声をかけた。それから1年、適応指導教室に週3日通うようになり、今年は高校進学の目標を発表した。桑鶴さんは「メンターの役割はリアルの楽しさや人間関係を築く魅力を伝えること。それに気づいてくれたことがうれしい」と話した。【井上元宏】
具体的にほめることが大事
インターネット依存について、竹内和雄・県立大准教授に聞いた。
――子どもたちがインターネットを長時間利用する背景は?
◆一つはネットの世界では簡単に「すごいね」と認められること。私は「被承認欲求」と呼んでいます。テストで90点とるのも、野球でホームラン打つのも努力が必要ですが、オンラインゲームはアイテムを買って、高得点を挙げれば「すごい」と周囲が言ってくれます。
社会にも原因があります。子どもがサッカーや野球ができる公園は少ない。遊ぼうと思ってもネット以外の行き先がありません。親世代もネットゲームに慣れている。親も「父さんすごい」と子どもに憧れてもらいたい気持ちがあります。昔の父親は息子とキャッチボールして威厳を示していましたが、今はゲームに置き換わっています。
――ネット依存傾向から抜け出すには?
◆「やめなさい」ではなくて、ネットをやっている時間を他の楽しいことに置き換えていくことを勧めています。オフラインキャンプで釣りやカヌーをする理由もそこにあります。最終的には自分で考えて、ネットとは別のことを選んでいくようにする。そのためには将来の目標作りが大切になります。
――周囲が心がけることは?
◆ほめることです。それも、子どもが具体的にしたことをほめる。ネット依存傾向の子どもたちは「私なんか」と自己否定感が強いです。「野菜が上手に切れたね」などとほめていくと自信につながり、目標を作り、実現しようという力が生まれるんです。小学生がネットゲームがやめられず相談に来ることが増えました。「欲に負けちゃう」と。子どもの悲鳴です。知った大人には手助けする責任があります。