目的は? 相次ぐ名馬の「たてがみ」切り取り 過去にはメルカリ出品も

北海道の牧場で、名馬として知られた元競走馬の「たてがみ」の一部が何者かに切り取られる事件が相次いでいる。一般客の見学中に切られた可能性が高く、北海道警は器物損壊容疑で捜査を開始した。ファンとのふれあいの機会を設けた牧場側の善意を踏みにじる蛮行に、胸を痛める関係者。過去には、たてがみがフリーマーケットアプリに出品されていたとの情報もある。犯人の目的は何なのか。(矢田幸己)
「まさか、と思った」。15日早朝、北海道日高町の牧場「ヴェルサイユファーム」社長の岩崎崇文(たかふみ)さん(27)は目を疑った。日課とする馬のブラッシングの際、元競走馬の「タイキシャトル」と「ローズキングダム」の2頭のたてがみの一部が失われていたのだ。タイキシャトルは、幅と長さがいずれも10~15センチ程度にわたり鋭利なもので切られていたという。
タイキシャトルは国内外のG1で5勝、ローズキングダムも平成22年のジャパンカップを制すなど、いずれも輝かしい成績を収めたサラブレッド。引退後の現在は同ファームで静かに余生を送っている。
岩崎さんによると、2頭のたてがみは一般客の見学時間帯の14日午後の放牧中に切られた可能性が高い。
本業のサラブレッド生産の傍ら、見学者を受け入れてきた同ファーム。重賞馬の展示に対し、競走馬の登録管理などを行う財団法人から出る1頭あたりの助成は月2万円しかない。手間とコストがかかるが、それでもファンを受け入れるのは「あの馬に会いたい」というファンの気持ちに応えたいからだ。同ファームでは事件を受け、見学の当面休止と防犯カメラの設置を決めた。美しいたてがみはサラブレッドの象徴でもあり、岩崎さんは「たてがみを傷つけるとはファンの風上にも置けない」と憤る。
元競走馬を狙う不可解な事件は続く。同ファームから約70キロ離れた北海道浦河町の観光施設うらかわ優駿ビレッジアエルでは18日、5年の日本ダービーを制した「ウイニングチケット」の被害が、また20日には日高町の日西牧場で5年の菊花賞馬「ビワハヤヒデ」の被害が、それぞれ明らかになった。
競走馬の資質向上を図る日本軽種馬(けいしゅば)協会(東京)の日高案内所の担当者は「今後もこうしたことがあれば見学の可否に関わる。絶対にやめてほしい」と訴える。
危険な切り取り行為、メルカリ「不正商品ならば通報も」
たてがみを切られた馬にはどんな影響があるのか。
「馬の健康には影響はない」と話すのは、動物の生態に詳しい天王寺動物園(大阪市)の西岡真・獣医師。人間でいえば髪の毛を切られたようなもので、「馬も痛みを感じない」という。ただ馬が暴れるなどすれば、刃物で馬体を傷つけたり、人が蹴られたりする可能性があり、人馬ともにリスクがある行為であることは間違いない。
事件について北海道警は器物損壊容疑で捜査。以前、競走馬のたてがみと称するものが、フリーマーケットアプリ「メルカリ」に出品されていたとの情報もあるが、今回の事件との関連性は不明だ。
仮にフリマアプリへの出品目的の犯行だった場合、どのような罪に問われる可能性があるのか。
「切ったたてがみを持ち出した時点で、窃盗罪が成立する」と話すのは、甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)。購入者側も注意が必要だ。「盗まれたものだと知って購入すれば、盗品等有償譲り受けの罪に問われる可能性がある」(園田教授)という。
メルカリの広報担当者はたてがみの出品について「個別の出品に関する詳細は非公開」とした上で、「不正な経路で入手した商品だと確認されれば、利用の停止とともに捜査機関への通報などの対応を行う場合がある」とした。