若者の容体急変の陰に肥満と糖尿病 隠れ基礎疾患も

新型コロナウイルスの感染拡大「第5波」では、当初は重症化しにくいとみられていた若年者で容体急変するケースが相次いだ。重症患者に肥満や糖尿病の人が多い傾向も判明したが、若年者では基礎疾患(持病)に気づいていない人が少なくない。40代以下はそれ以上の年代よりワクチン接種率が低く、「第6波」の到来で再び病床逼迫(ひっぱく)が起きれば、多くの命が危険にさらされる恐れがある。(三宅陽子)
「『隠れた基礎疾患』に気づかずにコロナに感染し、結果的に危機的状況に陥った人もいる」。自宅療養者の訪問診療を行ってきた「多摩ファミリークリニック」(川崎市)の大橋博樹院長はこう話す。
保健所からの依頼で、40代女性のもとに駆けつけたとき、呼吸状態は比較的安定していたものの、意識がもうろうとし、水分や食事もとれない状態だった。女性は基礎疾患を認識していなかったが、糖尿病の傾向があることが判明。発見が遅れれば、糖尿病の悪化で命が危ぶまれたという。
大橋氏によると、急遽(きゅうきょ)実施した血液検査で基礎疾患が発覚したケースは、この女性だけではない。保健所から「基礎疾患なし」と報告を受けていても、訪問診療の際に「健康診断を受けてこなかった」「健診で受けた指摘を放置してきた」と話す患者もいた。
女性は基礎疾患の悪化で入院が必要とみられたが、病床逼迫で入院がかなわなかった。在宅で治療を受けて症状は快方に向かったものの、長く寝たきりだったこともあり、自宅でリハビリ生活を続けることになったという。
「第5波では『基礎疾患なし』と保健所に伝わってしまうと、入院の優先順位が下がる状況にあった。命を守るためにも、日頃から体の状態を把握しておくことは重要」。大橋氏はそう呼びかける。
糖尿病以外に、肥満が重症化のリスク要因であることも明確になってきた。第5波で確認された大阪府の重症患者683人を分析した調査では、高い肥満度を示す「体格指数(BMI)30以上」だったのは40代以下で22・7%、20代以下では50%に上った。
医療法人社団「悠翔会」(東京都港区)が8月11日からの約1カ月間に訪問診療した患者402人は20~50代が中心で、中等症以上が約7割を占めた。酸素吸入が必要とされる「中等症Ⅱ」以上になった人の大半は肥満体形で、約半数は糖尿病を抱えていた。
当時は中等症以上でも入院できないケースが相次ぎ、酸素飽和度が悪化しても息苦しさの自覚がない患者もいた。肥満や糖尿病は重症化予防につながるワクチン接種の優先対象だが、2回接種を終えた人は1人もいなかったという。
首相官邸(今月11日時点)によると、ワクチンを2回接種した人の割合は60代以上が8割を超えているのに対し、50代74・04%、40代60・63%、30代49・65%、20代45・84%、12~19歳33・68%と年齢が下がるほど低くなる。若年層にワクチンが行き渡らないまま、冬場に感染が再拡大すれば、訪問診療の現場も追い込まれかねない。
同会の佐々木淳理事長は「新型コロナは容体急変の恐れがあり、在宅で診るべき病気ではない」と指摘。「中等症Ⅱ以上の人は原則入院が望ましい。病床が逼迫していても、何かあればすぐ医療につなげられる自宅と病院の中間のような臨時の医療施設を早急に整備してほしい」と訴えている。