政権が交代すると、「ハネムーン」という言葉がメディアで多用されます。もちろん、新婚旅行のことではなく、「政権発足からしばらくの間、国民・メディアなどが批判を控え、新政権の施策を見守る期間」(デジタル大辞泉)のことです。
もともとは、2大政党制を敷く米国の慣例で、政権が交代すれば軌道に乗るまで時間がかかることから、「まずは見守ろう」ということのようです。2009年の民主党政権誕生時も、この言葉がしきりに使われ、鳩山由紀夫首相や閣僚らを温かく見守ろうという空気があったようです。
さて、自民党総裁選を経て首相指名された岸田文雄政権には、このハネムーン期間は存在しないかに見えます。
政権発足直後、メディア各社は世論調査を行いました。内閣支持率は、最高が日経新聞の59%。以下、読売新聞56%、共同通信55・7%、毎日新聞49%、最低の朝日新聞が45%でした。
今回は自民党内の権力移動に過ぎず、「(政党が交代する)政権交代ではないから、ハネムーンなど存在しない」という指摘はごもっともです。とはいえ、発足から1週間足らずで「伸び悩んだ支持率」などという記事がいくつも出てくるのをみると、「評価を下すのが性急すぎないか?」と思ってしまいます。
何しろ、各社が緊急世論調査を行ったのは首相指名選挙が行われた今月4日と翌5日です。閣僚の顔ぶれが決まり、その人事の意図の分析もそこそこに、「支持か、不支持か」を聞いているのです。これでは、それまでメディアが植え付けたイメージを個々人に聞く、人気投票に過ぎないのではないでしょうか。
自民党総裁選は、メディアジャックと呼ばれるほど大きく報じられました。中でも注目を集めていたのは河野太郎氏と高市早苗氏で、岸田氏はどちらかというと「地味な印象」だったことは否定できません。
その岸田氏が首相となったので、拍子抜け感から低い評価が下されたのだとしたら、あまりにも政治を軽く見過ぎてはいないでしょうか。
コロナ対策と経済をどうバランスするか、中国を念頭にした経済安全保障、国家安全保障戦略の見直しなどなど、所信表明演説などを通じて徐々に政策が見えてきました。一部閣僚からは「財政規律」を過度に重視するかのような発言もあり、心配な部分もあるのは事実です。
ただ、週内に衆院選に向けての政権公約が出るとのことですから、評価はそれからすべきでしょう。ハネムーン期間だから甘い評価をすべきだと言っているのではありません。「少なくとも、やろうとしている仕事の輪郭がはっきりしてから判断しても遅くはない」と言っているのです。
■飯田浩司(いいだ・こうじ) 1981年、神奈川県生まれ。2004年、横浜国立大学卒業後、ニッポン放送にアナウンサーとして入社。ニュース番組のパーソナリティーとして、政治・経済から国際問題まで取材する。現在、「飯田浩司のOK!COZY UP!」(月~金曜朝6-8時)を担当。趣味は野球観戦(阪神ファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書など。