河井被告元秘書VS自民VS市民団体 仁義なき県議補選

衆院選(19日公示、31日投開票)が迫るなか、広島政界では11月5日告示、14日投開票の県議補選広島市安佐南区選挙区(欠員1)にも注目が集まっている。安佐南区は、令和元年7月の参院選をめぐる大規模買収事件の舞台。渦中の河井克行被告(58)は有罪判決を受け、現在控訴中だ。今回の補選は、衆院選で比例中国ブロックに立つ予定の自民党新人が7月に県議を辞職したことに伴う選挙として行われ、これまでに3人の新人が立候補を表明。元町議のほか、事件の究明を求めていた市民団体前事務局長、克行被告の元秘書による激戦が予想されている。県議補選の行方を追った。
買収事件の余波
安佐南区は元法相の河井克行被告と妻、案里元参院議員(48)の地盤だった。克行被告は案里氏が出馬した2年前の参院選をめぐり、公選法違反罪に問われて衆院議員を辞職。実刑判決を受け、現在は控訴中だ。
案里氏の当選無効に伴って実施された4月の参院広島再選挙は「政治とカネ」が最大の争点になり、立憲民主党などが推薦した女性候補が自民党公認、公明党推薦の男性候補に大差で当選を果たした。
当初、比例で立候補予定の元県議が克行被告に代わる広島3区の自民党公認候補となる予定だったが、自公調整で衆院選で比例中国に回った経緯がある。
今回の補選に立候補を表明しているのは3人の新人。元山口県和木町議の灰岡香奈氏(38)=自民公認=▽市民団体「河井疑惑をただす会」の前事務局長、山根岩男氏(70)=無所属、共産推薦=▽河井克行被告の元公設秘書、会社員、伊藤守氏(45)=無所属=だ。
「保守系変わらない」
灰岡氏は山口県出身で、日本維新の会から平成29年10月の衆院選広島2区に立候補するなど、国政選挙に計4回挑戦している。いずれも落選し、昨年6月に日本維新の会を離党した。その後、自民広島県連が行った衆院選広島3区の立候補予定者となる党支部長の公募に応募。最終選考に漏れたが、今年8月に自民党員になり、今月8日、党の公認を得た。
維新の離脱については「保守系というのは一貫して変わらない」としながらも、「維新の政治改革を学んで、広島で広げていきたいと思って8年間チャレンジしたが落選し、受け入れられなかったという事実がある。正直、国政選挙においては地盤や看板がない私では無理だったと気づくのが遅かった、と周りには言われた」などと説明した。
「金権政治を一掃」
山根氏は、地元中国新聞社の元社員。今年9月までの約2年間、市民団体「河井疑惑をただす会」の事務局長を務めて先頭に立ち、河井夫妻や被買収者らを告発するなどして追及してきた。
活動を知る市民からの後押しを受け「金権政治を一掃することを第一の公約にして、立候補することを決意した」と説明。「買収事件の震源地、安佐南区の県議補選を見て見ぬふりはできん、ということで、今こそ声を上げにゃあいけん。議会の中で声を上げ、厳しくただしていく。こういうことも必要」と訴えた。
強調するのはもちろん全容の解明だ。「残念なことにいまだに真相は闇の中。この闇に光を当てて解明していくのも市民の声、力だと思う」と語った。
「関与なし」強調
伊藤氏は島根県川本町出身。広島大を卒業後、川本町職員や不動産会社の会社員などを経て、平成26年の衆院選で克行被告の陣営を手伝ったのが縁となり、克行被告の公設第2秘書となった。
政治家を目指したのは、平成26年8月の広島土砂災害がきっかけ。広島市安佐南区八木に住んでいた親族が被災し、「当時、今の自分では何もできない無力さを感じ、役場勤務の経験から、早期の復旧復興のためには、行政の力、また、政治の力が必要と思った」と克行氏の秘書となった。
家庭の事情で29年に退職しており、河井夫妻の事件については「秘書を退職した後で、詳細については報道で知ることが多い。当該事件については一切関与していない」と強調する。
予測不可能
伊藤氏の出馬について、山根氏は「正直なところびっくりしている」と驚きを隠せない。伊藤氏の訴えに対しても、山根氏は「そう簡単に(政治への不信感の)払拭はできないだろうと感じる」とぴしゃり。一方で「注目される選挙になるということは必要なことだ。むしろ、忘れられてはいけない」とも話した。
また、灰岡氏は「立候補者に関して何かを言う立場でもない。それぞれが有権者に訴えていくだけ」と言及を避けた。灰岡氏の陣営は「無所属の方がいいのではないかとも思ったときもあったが、(広島が地元の)岸田総理となったことが後押しになれば」と期待を寄せる。
ある自民党関係者はこう話す。「どんな投票構造になるのか、今はまったく予測がつかない。だれが勝つか分からない」。
有権者はどんな選択をするのだろうか。(嶋田知加子)